
自動車保険の等級とは、何でしょうか?
等級が上がれば上がるほど、保険料は下がる傾向にあるというところはご存じの方も多いことと思います。でも、詳しいことはよくわからない…そんな方もいらっしゃるでしょう。
自動車保険で気になるのは保険料。その保険料を左右する等級を上げるためにはどうしたらいいのでしょうか?等級が上がるとどのくらい保険料が変わってくるのでしょうか?自動車保険の等級が上がるしくみと保険料の関係性について見てみましょう。
そもそも等級って?等級が上がるとは?
まず、そもそもの等級制度について確認しましょう。
自動車保険では、車両の種類、保険金額、記名被保険者の年齢などさまざまなリスクを細分化して、一人ひとりに合った保険料が算出されます。その保険料算出の要素の1つが、ノンフリート等級別料率制度です。

ノンフリート等級とは、契約者が所有・使用するお車の契約台数が他社を含め9台以下の場合の契約に対して適用される割増・割引率の等級区分のことをいいます。ノンフリート等級別料率制度では、過去における保険事故の実績により、1等級から20等級までの等級が決定され、それぞれの等級に応じて保険料の割増引率が決定されます。自動車保険の「等級」とは、このノンフリート等級のことを省略して言われているものです。
このノンフリート等級別料率制度は損害保険会社各社が加盟している損害保険料率算出機構によって定められている制度です。ノンフリート等級は前年契約の事故歴や回数、事故の内容で契約ごとに設定されます。また、各社共通の制度ですので保険会社を変えた場合でもノンフリート等級は引き継がれます。
初めて自動車保険に加入する場合には6等級(一定の条件を満たす場合には7等級)からのスタートとなります。そして1年間無事故で保険を使用しなければ、翌年度の等級は1等級上がることになります。6等級の人であれば、翌年度は7等級、15等級の人であれば翌年度は16等級という具合です。6等級からスタートの方は、上限の20等級になるまでに最短でも14年かかります。
なお、20等級の人の場合はすでに上限なので、1年間無事故で保険を使用しなかった場合には翌年も20等級です。

- ※事故の種類によっては等級に影響しない(ノーカウント)事故もあります。
等級が上がると保険料はいくら下がるの?
保険料の割増引率に影響を及ぼすのが等級ですが、等級が上がると保険料はどのくらい変わってくるのでしょうか。
ここでは、6等級(S)、11等級、19等級の場合に事故が無く翌年度等級が1等級進んだ場合どのくらい保険料が変わってくるのか、イメージで確認してみましょう。


- 【算出条件(共通)】車名:NBOX、型式:JF4、初度登録年月:令和4年1月、使用目的:日常・レジャー、年齢条件:26歳以上補償、運転者限定:本人限定、割引:ゴールド免許割引/新車割引/インターネット割引/証券不発行割引、記名被保険者:東京都在住、対人賠償保険:無制限、対物賠償保険:無制限、人身傷害補償保険:3,000万円(自動車事故補償)、搭乗者傷害保険:無し、車両保険種類:一般車両、車両保険金額:195万円、車両自己負担額:5-10万円、払込方法:一括払
【算出条件(現在の契約)】保険始期:令和4年1月、記名被保険者:34歳、年間走行距離:5,000km以下、契約形態:継続契約以外
【算出条件(翌年度の契約)】保険始期:令和5年1月、記名被保険者:35歳、年間走行距離:3,000km超 5,000km以下、契約形態:継続契約
保険料は車両の種類、保険金額、記名被保険者の年齢などさまざまな要素で決まりますので、こちらの保険料例は各等級でのイメージになります。1等級でのインパクトはさほど大きいものではないかもしれませんが、上図での6等級(S)と20等級の差も併せてご覧いただくと、等級の大切さがご理解いただきやすいのではないでしょうか。
等級を上げるためには?
等級は、1年間事故が無ければ1等級上がります。現在の等級制度において、1年に2等級以上あげる方法は、残念ながらありません。では、等級を確実に上げるためには、何をしたらよいのでしょうか。

1安全運転の心がけ
等級を1年に1等級ずつ確実に上げていくためには、当たり前になりますが「事故を起こさないこと」。つまり安全運転を心がけること、これが何より大事になります。
近年はさまざまな安全装置を搭載した自動車が販売されていますので、新しく自動車を購入する場合にはそのような自動車を選ぶことも安全運転のための賢い選択になるでしょう。自動車を新調する予定はないけれど心配で…という方には、前方障害物との車間距離によって警告音が出るなど、さまざまなタイプの後付の安全装置が各社から販売され始めていますので、そういったものの導入をしてみるのもよいでしょう。
また、あらためて安全運転5則や高速運転安全5則を確認し、日々の運転を振り返ることも大事です。
- 安全運転5則
-
- ・安全速度を必ず守る
- ・カーブの手前でスピードを落とす
- ・交差点では必ず安全を確かめる
- ・一時停止で横断歩行者の安全を守る
- ・飲酒運転は絶対にしない
(昭和56年 警察白書 より)
- 高速運転安全5則
-
- ・安全速度を守る
- ・十分な車間距離をとる
- ・割り込みをしない
- ・わき見運転をしない
- ・路肩走行をしない
(昭和55年 警察白書より)
2保険を使うか見極める
安全運転をどれだけ心がけていても、防ぎきれない事故も、事故に巻き込まれてしまうことも残念ながらあることでしょう。それでは、事故が起こったら等級が上がらなくなることから逃れられないのでしょうか。
実は、事故が起こったからといってすぐに等級が上がらなくなるのではなく、その事故について保険請求を行うことで事故に応じて等級が上がらなくなるのです。つまり、事故が起こっても保険を使わなければ、等級を上げることができるのです。

事故のために備えた保険なのに保険を使わないなんて本末転倒だ、せっかく保険料を払っているというのに…そう思った方もいらっしゃるかもしれません。確かに保険はもしもの時のためにあるものですし、事故があった場合には請求する権利は当然にあります。
ただ、事故が起こって保険を使用しますと、翌年の等級は下がってしまい、保険料は上がります。そして、その下がった等級は1年に1等級ずつしか戻りませんので、もし「3等級ダウン事故」を起こしてしまった場合には、元の等級に戻るまで少なくとも3年かかることになります。さらに、同じ等級であっても事故があった人の割増引率と、事故が無かった人の割増引率は異なります。つまり、3年間割高な保険料になってしまうのです。
「等級が戻るまでの保険料の差額と事故で発生した損害、どちらが高いか?」その答えによっては保険を使用せずに自費で修理を行ったほうがいい場合もあるのです。そこをどう判断するかは、お客さま次第です。
そうはいっても、どちらが高いかなんてどう調べたらいいのか、わかりませんよね。そこはご加入の保険会社に相談するとおおよその金額について確認をしてもらえるはずですので、問い合わせてみると良いでしょう。
等級が下がることについての詳しい説明はこちらのコラムでご確認ください。
SBI損保では、保険を使用するかどうか決まっていない場合にも、事故のご連絡をしていただければ、修理方法とその金額を修理工場などと打ち合わせして確認いたします。また、お相手との交渉も専門の事故スタッフが対応いたします のでご安心ください。そして保険を使用した場合の概算保険料を算出し、お客さまに合った解決の方法を一緒に検討させていただきます。
今まで事故を起こしたことが無いからどこに修理を頼めばいいかわからない、保険を使わずに極力修理費を安く抑えたい、また修理中の代車を使いたいけどレンタカー特約を付けていなかった…そのような場合も、SBI損保では、SBI損保安心工場(指定修理工場)をご紹介させていただきます。
SBI損保安心工場(指定修理工場)では、お引き取り・納車が無料、修理期間中の代車も無料、修理保証書の発行も行っておりますので、修理箇所について万が一不具合が発生した場合も安心です。
SBI損保安心工場についての詳しい説明はこちらでご確認ください。
3複数所有新規を利用する
その他に等級を早く進めるために、何かできることは無いのでしょうか? 実は、条件がそろえばスタートダッシュをかけることが可能です。それが、「複数所有新規」という制度です。
複数所有新規とは、ご家族の方ですでに自動車をお持ちの方がいらっしゃる場合には、一定の条件を満たすと2台目の車については6等級からではなく、7等級でスタートができるという制度です。2台目以降のお車に適用されることから、「セカンドカー割引」と呼ばれることもあります。1等級分進めてスタートすることができますので等級の進みを少し早くすることができます。
奥さまの車を増やす場合や、お子さんの通学・通勤用の車両を新たに購入した場合などは、この条件を満たす契約があるかどうか、契約前にぜひご確認ください。
複数所有新規の詳しい説明はこちらでご確認ください。
4悪い等級から逃げられるか?
気を付けていても事故を起こして保険を使用すると等級は下がってしまいます。そこでつい考えてしまいそうなのが、下がった等級から逃げられないのか?ということ。等級が下がってしまったら解約して他社で入り直せば6等級で契約ができそうではありますが…そんなこと、できるのでしょうか。
結論から言うと、できません。
ノンフリート等級別料率制度の適切な運用を図るため、損害保険各社間ではネットワークを用いた情報交換を行い、保険契約者の名前や等級、事故有係数適用期間、車両登録番号、事故件数など契約に関するさまざまな項目について確認を行っています。
仮に過去の等級や事故歴を隠して自動車保険に加入したとしても、この情報交換制度によって正しい情報は引受保険会社の知るところとなるのです。保険会社では正しい等級などを確認でき次第、保険期間が始まっていても等級の訂正や追加保険料の請求を行います。不正はやはりよくないということですね。
その他等級を上げるうえで気を付けたいことは?

1年で1等級ずつしか上げられない等級、等級を上げるうえで注意しておきたい点についてご紹介します。
1保険会社を乗り換えるとき
まず、保険会社を乗り換えるタイミングです。自動車保険の保険料などの理由から、保険会社の乗り換えを検討する方もいらっしゃるかと思います。保険会社の乗り換えは保険期間中に解約して乗り換える方法と、満期のタイミングで乗り換える方法とがあります。
保険料のことを考えれば今すぐにでも安いほうに乗り換えたほうがいいに決まっているのでは?とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。確かに保険料のことだけ考えればその可能性が高いと言えそうです。しかしながら、保険期間中に解約した場合に等級はどうなるか、ご存じでしょうか?
実は、満期を待たずに保険期間中に解約して他社に乗り換える場合は、現在の等級のまま、さらに現在の保険期間中に事故があった場合にはその事故内容などを反映して、乗り換え後の契約がスタートするのです。
具体的な例を見てみましょう。
たとえば現在の契約が16等級のSさんの場合、
・保険期間中に事故が無い場
保険期間中に乗り換えると

保険期間満了を待って乗り換えると…17等級になるのは早い

・保険期間中に3等級ダウン事故が1件ある場合
保険期間中に乗り換えると

保険期間満了を待つと、等級が下がるのを遅らせることができるが、等級の戻りも遅い

このように、保険期間満了を待たず保険期間中に解約し保険会社の乗り換えを行う場合、事故が無い場合には等級が進むのが満了時の乗り換えに比べて遅くなります。そして事故がある場合には満了時の乗り換えに比べて等級が下がるのが早くなるのです。
そうなると、事故が無ければ満了を待てばよく、事故があったら等級を早く戻すために保険期間中に解約するのがいいということで決まりなのでしょうか?特に事故があった場合、等級は早く戻っても、その間の保険料はどうなるかを考えてみるとなかなか難しそうです。
等級はあくまで保険料を決める一因でしかないため、保険料を重視する場合には等級の進みという点だけで乗り換え時期を判断するのは危険でしょう。各社さまざまなリスク細分に基づき保険料を決定していますので、場合によっては等級の割引以上に保険料がお手頃になることもありそうです。また、保険期間中に解約して他社に移行する場合には解約返戻金がどの程度戻ってくるかという点も加味したうえで乗り換えのタイミングを考える必要があります。
なお、保険期間中に他社に乗り換える場合には、正しく等級を引き継ぎ、補償の過不足が生じないよう解約日と次の保険始期日が連続するように手続きを進めるよう気を付けましょう。
2自動車をしばらく手放すとき
次に気を付けたいのは、自動車をしばらく手放すときです。 たとえば愛車を手放ししばらく車は持たないことになったときや、海外転勤が決まったときなど、自動車にしばらく乗らないので自動車保険が不要になることがあるかと思います。せっかくここまで事故もせずに等級が上がってきたのに、次に車を持つときはまた6等級からのスタートになってしまうのは、残念ですよね。そこで役立つのが、「中断制度」です。
中断する契約の次の契約のノンフリート等級が7等級以上になり、海外渡航の場合(海外特則)と国内での車両廃車などの場合(国内特則)それぞれ一定の条件を満たしたとき、契約者からの申し出に応じ「中断証明書」が発行されます。
中断証明書を用いた契約の再開は保険会社であれば発行当時の保険会社でなくとも対応可能ですが、一定の条件があります。再開希望時には条件を満たしているかどうか、きちんと確認をしましょう。なお、再開時には中断証明書の原本が必要となりますので、発行した場合には忘れてなくしてしまわないよう、大切に保管しておきたいですね。万が一、紛失した場合には発行元の保険会社に再発行の依頼をすればいいのですが、手間も時間もかかるのでできれば避けたいところです。
SBI損保でも、もちろん中断証明書を利用した契約が可能です。その際には、中断証明書や中断した理由に応じた書類の確認などが必要となりますので、インターネットからのお手続きではなくお電話によるSBI損保サポートデスクでお手続きとなります。
中断証明書の発行についての詳しい説明はこちらでご確認ください
まとめ
等級は自動車保険において各社共通の制度で、新規であれば6等級からのスタートで、一定の条件を満たせば7等級からスタートできます。そして事故がなければ1年に1等級ずつ上がり上限は20等級、事故があり保険を使用すれば事故の内容に応じて1等級または3等級下がります。
等級によって保険料の割増引率が変わってきますので、等級が上がれば上がるほど、保険料は下がる傾向にあります。等級を上げるには何よりも安全運転が大事ですが、損害額によっては保険を使用せず自費で修理することで等級を進ませることも手段として考えたいですね。
また、進んだ等級は中断証明書で10年間は保存しておくことができますので、自動車を手放す際には忘れずに手続きを行いましょう。
多くの人が1年に1回更新する自動車保険。何となく継続を続けるのはもったいないので、今こそきちんと理解して、賢く使いこなしたいですね。
執筆年月日:2020年3月
(最終更新日:2023年1月4日)