
自動車保険の契約をする際は「記名被保険者」を設定する必要があります。自動車保険には契約者の設定も必要ですが、違いはどこにあるのでしょうか。また、契約をしたときの自動車を運転する主な人が変更になった場合、この記名被保険者の変更が必要になります。本記事では記名被保険者の意味や契約者との違い、名義の変更が生じるタイミング、等級の扱いや引き継ぐ際の対応などについて解説します。
目次
記名被保険者とは
記名被保険者とは、補償の中心となる人のことで、主に契約自動車を運転する人を記名被保険者とするのが一般的です。記名被保険者はお車の所有者や自動車保険の契約者とは限りません。そして、誰でもなれるわけではありませんので、対象者を把握しておきましょう。また、記名被保険者と「被保険者」との違いも確認しておいてください。
記名被保険者になる人
記名被保険者になるのは、自動車保険を契約したお車を主に運転する人です。記名被保険者が契約自動車を運転していて事故やトラブルに遭遇した場合、補償の対象となります。契約者が記名被保険者となるケースが多いのですが、それ以外の人を記名被保険者とすることも可能です。たとえば、車検証の「所有者の氏名または名称」「使用者の氏名または名称」の欄に名前が記載されている人は記名被保険者になれます。
なお、運転者が複数いる場合でも、記名被保険者は1名しかなれません。「夫と妻の運転時間が同じくらい」でも1名のみを選ぶ必要があります。
記名被保険者以外の被保険者
保険証券に氏名が記載されるのは記名被保険者となりますが、たとえば補償範囲を「家族限定」とした場合には、記名被保険者の配偶者、同居の親族、別居の未婚の子どもが「被保険者」となり、同様に補償を受けられます。以下で具体例をご紹介します。
【自動車保険の補償範囲が「家族限定」の場合】
記名被保険者 | 夫 |
---|---|
被保険者 |
妻
|
上記のとおり、記名被保険者は1名のみですが、被保険者は複数人になることもあります。
自動車保険には3つの名義が必要
自動車保険の契約を行う際には、3つの名義の登録が必要です。それぞれ説明します。

契約者
自動車保険における「契約者」とは、実際に保険の契約を結ぶ人のことです。自動車保険では、この契約者が保険料を支払います。そのため、保険料の支払い義務のある人のことでもあります。契約者は契約自体の当事者ですので、契約内容の変更や解約、補償内容の変更などを行う権利を持っています。
記名被保険者
自動車保険における「記名被保険者」とは、その保険契約の対象となる自動車を主に運転する人のことを指します。保険証券に記載された範囲の補償を受けることができます。
なお、記名被保険者は自動車保険の契約者と契約自動車の所有者が異なっても問題ありません。父親が契約自動車の所有者かつ自動車保険の契約者で、子どもが記名被保険者になるという契約も可能です。
所有者
自動車保険における「所有者」とは、保険契約の対象となっている自動車を保有している人のことを指します。自動車の所有者が誰になっているのかは、車検証に記載されています。つまり、車検証に所有者と記載のされている人が自動車保険における所有者であるということです。
また、車両保険に加入していた際に、車両保険金(契約自動車の損害に対する保険金)を受け取れる対象者が所有者でもあります。
「契約者」「記名被保険者」「所有者」がそれぞれ違う場合でも自動車保険の加入は原則可能ですが、契約の際にはそれを申告する必要があります。もし何らかの理由で申告が漏れてしまっていた場合は、保険金の支払いがされない場合もあるので、くれぐれも注意してください。
記名被保険者の変更が必要なタイミング
記名被保険者には、次に挙げるようなタイミングで変更が必要になる場合があります。こちらでは、タイミングごとにそれぞれ紹介します。

主に運転する人が変わったとき
契約の対象となる自動車を主に運転する人が変わったときは、記名被保険者の変更が必要になります。変更が必要になるシチュエーションとしては、たとえば、単身赴任をきっかけにして主な使用者が変わった場合や、子どもが運転免許を取得したために、その子どもが親に代わって対象の自動車を運転するようになった場合などのパターンが考えられます。
また、結婚して記名被保険者の姓が変わった場合などにも、名義変更の手続きを取る必要があります。
名義変更の手続きに必要な書類は保険会社により異なりますが、SBI損保の場合は記名被保険者を変更する場合は、新たな記名被保険者の氏名・住所が確認できる以下の書類のいずれかの提出が必要となる場合があります。
- ・運転免許証の両面コピー
- ・健康保険証の両面コピー
- ・年金手帳のコピー
- ・住民票(3か月以内に発行しているもの)
ちなみにSBI損保では同居中の同姓の親族への変更はインターネット上で行えます。マイページから必要事項を入力し、必要書類を提出すれば手続きは完了です。それ以外の人に変更される場合や、改姓の手続きの場合は、契約者本人からSBI損保サポートデスクに連絡します。
記名被保険者が亡くなったとき
記名被保険者として契約し、定められていた人が亡くなった場合は、記名被保険者の名義変更の手続きの必要があります。ちなみに、記名被保険者ではなく実際に保険料を支払っている「契約者」が亡くなった場合にも名義変更の手続きを行う必要があります。また、自動車保険を契約する際に登録が必要な「所有者」が亡くなった場合にも名義変更の手続きが必要です。
記名被保険者を変更する際の注意点
告知義務違反になるケース
非常によくない例ですが、「家族限定」の自動車保険の保険料を少しでも抑えるため、主に運転する夫ではなく、ゴールド免許を持ったペーパードライバーの妻を記名被保険者にするというケースがあります。
保険料節約のため記名被保険者を主に運転する人以外にすることは告知義務違反に該当し、保険金が支払われなかったり、契約解除になることもあります。
記名被保険者は正しく告知を行いましょう。
補償範囲が変わるケース
記名被保険者の変更は契約途中でも行えますが、変更により補償範囲が変わるケースがあります。
たとえば、「家族限定」自動車保険の記名被保険者をAさんから息子Bさんに変更する場合、別居しているため補償対象外だったAさんの未婚の孫(Bさんの子ども)も補償範囲に入ることになります。
もし、Aさんの孫が自身で自動車保険に入っていた場合、補償が二重になり、保険料が無駄になる可能性もあります。
記名被保険者を変更する際は、補償範囲も必ず確認し、必要であれば範囲の変更や契約の見直しを行いましょう。
等級を引き継げないケース
記名被保険者を変更することで等級を引き継ぐことができず、保険料が高くなる場合があります。
配偶者や同居親族に記名被保険者を変更する場合であれば、基本的に等級を引き継ぐことができます。よって、保険料の変更もありません。ただし、等級を引き継げるケースは限られているため、等級を引き継ぐことができない人を新たな記名被保険者とする場合は保険料が高くなってしまう可能性があるのです。
自動車保険の等級制度と等級の引き継ぎについての詳細は次章をご確認ください。
記名被保険者の変更と等級の引き継ぎについて
こちらでは記名被保険者を変更した場合の等級の引き継ぎについて説明します。

等級とは
「等級」というのは、契約者の事故歴に応じて保険料を割り引いたり割り増ししたりする制度のことです。1等級から20等級までの階級に分かれており、最初に自動車保険の契約をする際は6等級から始まります。1年間無事故だと1等級上がり7等級になり、その翌年も無事故だと8等級になります。最高20等級で、事故を起こして保険金の支払いを受けると等級が下がったり、保険料が高くなったりして影響がでます。
等級は保険会社を変えれば元の等級に戻るといったものではありません。なぜなら、各保険会社がお互いに共同運用しているからです。そのため、実質どこで保険の契約を結んでも最初は6等級からですし、保険会社を変えても等級が上がったり下がったりすることはありません。
基本的には、記名被保険者を変更する場合、変更前の等級は友人や知人などの他人には引き継ぐことはできません。
記名被保険者の変更で等級が引き継げるケース
基本的に記名被保険者を変更すると等級を引き継ぐことはできませんが、以下の場合に限っては記名被保険者を変更しても等級を引き継げます。それは「記名被保険者の配偶者」「記名被保険者の同居親族」「記名被保険者の配偶者の同居親族」の3パターンに当てはまる場合。先にも紹介しているとおり、友人や知人に引き継ぐことは原則できません。
ここでいう親族とは「6親等内の血族」あるいは「3親等内の姻族」を指します。また、親族間だったとしても、配偶者以外は同居していなければ等級を引き継ぐことはできませんので、この点は特に注意が必要です。
たとえば、進学や就職で実家を出る子どもがいたとします。この場合に記名被保険者の名義変更をして、等級を引き継がせたい場合は、保険始期日時点での同居を確認できることが必要です。
記名被保険者の変更と保険料
記名被保険者によって保険料は変わる
繰り返しになりますが、記名被保険者によって保険料が変わってきます。保険料の決定には以下の要素が関係するからです。
- ・記名被保険者の年齢
- ・記名被保険者の等級
- ・記名被保険者の運転免許証の色
- ・補償範囲
主に運転する人が複数いる場合は、保険料のことも考えて記名被保険者を決定するようにしましょう。
また、補償範囲が広くなると保険料が高くなります。たとえば、「本人のみ」よりも「本人+配偶者」の保険料が高く、さらには、「本人+配偶者」よりも「家族限定」、「家族限定」よりも「運転者限定なし」のほうが高くなります。
補償範囲を広げると安心ではありますが、無駄な保険料を支払わないよう、慎重に検討しましょう。
自動車保険の記名被保険者は必要に応じて変更しよう
自動車の主な運転者が変わった場合や記名被保険者が亡くなった場合には、記名被保険者の名義変更手続きを取る必要があります。
SBI損保では、同居している同姓の親族への変更であればインターネット上で記名被保険者の変更が可能です。記名被保険者変更の機会に、ぜひ自動車保険の見直しをしてみてはいかがでしょうか。SBI損保の自動車保険は自分にあった必要な補償を細かく選べて保険料を節約できます。無料見積りはお気軽にできます。
記名被保険者でよくある質問
記名被保険者が実態と違うとどうなりますか?
主に運転する人以外の人が記名被保険者となっている場合、告知義務違反で事故の際の補償が受けられない可能性があります。
「ゴールド免許の人を記名被保険者にすると保険料が割り引かれる」という理由で、あまり運転しない人を記名被保険者にしたいと思う人もいるかもしれませんが、告知義務違反に該当すると保険金が支払われないだけでなく、契約自体を解除されるおそれもあります。絶対にやめるようにしましょう。
記名被保険者と契約者は同じですか?
記名被保険者と契約者は必ずしも同じである必要はありません。たとえば、契約者が親で記名被保険者(主に運転する人)が配偶者や子どもという場合もあるでしょう。
なお、保険料の支払いは契約者が行います。保険料払込の銀行口座やクレジットカードは契約者名義のものを準備してください。
執筆年月日:2020年3月
(最終更新日:2025年3月26日)