駐車場などで車のドアを開いた際、隣の車にぶつかってしまう事故を「ドアパンチ」といいます。加害者になってしまった方、被害者になった経験がある方、もう少しでドアパンチの当事者になりそうだった方など、身に覚えのある方は多いのではないでしょうか。ドアパンチは、誰もが加害者にも被害者にもなりえるのです。
ここでは、ドアパンチが起こる原因と、ドアパンチが発生したときの対処法を解説します。また、トラブルに発展しないために注意すべき点や、当事者にならないための対策についても見ていきましょう。
目次
ドアパンチとは車のドアが隣の車にぶつかること
ドアパンチとは、駐車中の車のドアを開けた際、ドアが隣の車にぶつかって傷が付いてしまうことをいいます。
車へのいたずらや車上荒らしなどと違い、ささいなミスや不注意で起こるため、誰もが加害者にも被害者にもなる可能性があります。
特に、狭い駐車スペースや混雑した駐車場で起こりやすく、場合によっては大きなトラブルにつながることもあるのです。
ドアパンチはどんなときに起こる?
ドアパンチは自分だけが気を付けていれば回避できるものではありません。同乗者による不注意で起こるケースもあれば、突風によってドアがあおられるケースもあります。ここでは、よくあるドアパンチの例を見ていきましょう。
駐車スペースが狭く、ドアがぶつかってしまった
駐車スペースが狭く、隣の車との距離が近いほど、ささいなことでもドアパンチは起こりやすくなります。駐車場に傾斜が付いていることで、思いがけず勢いよくドアが開いてしまうこともありえます。
注意不足で、入ってきた車に気付かずドアを開けてしまった
ドアを開けたところ、ちょうど隣のスペースに駐車しようと入ってきた車にぶつかってしまう場合もあります。死角から入ってくると気付きづらく、衝突してしまうこともあるのです。
風にあおられて、ドアが思いのほか大きく開いてしまった
車の中では外の風の強さがわかりづらいため、ドアを開けたところ強風にあおられて勢いがつき、隣の車にぶつかってしまうこともあります。ビル風が吹き抜けるような場所では、突風が吹くこともあるので注意が必要です。
子どもがはしゃいで、勢いよくドアを開けてしまった
子どもはうまくドアを押さえられなかったり、ほかのことに気をとられたりなどして、ドアを勢いよく開けてしまうことがあります。特に小さな子どもは力の加減が難しく、興奮したり遊びに夢中になったりすると、周囲の状況を十分に把握できないことが多いので、大人が気を配る必要があります。
焦って、よく確認せずにドアを開いてしまった
時間に追われて急いでいるときは、周りを十分確認せずにドアを開けてしまったり、つい力を入れてドアを開けてしまったりしがちです。
特に、仕事や家事、育児などで忙しい日常の中では、細かな注意がおろそかになることがあります。
薄暗い場所で、隣の車との距離を見誤ったままドアを開けてしまった
灯りが少ない薄暗い駐車場で、車間距離を見誤って車をとめてしまい、近づきすぎたことに気が付かずにドアがぶつかってしまう場合があります。
また、夜間や雨の日などは、周囲の状況がさらに見えにくくなるため、ドアパンチが発生しやすくなるでしょう。
荷下ろしをしているときに、ドアが大きく開いてしまった
荷物の出し入れをしているときは、荷物だけに集中しがちです。その結果、知らないうちにドアが大きく開いてしまい、ドアパンチにつながることがあります。
特に、重い荷物やかさばる荷物を扱っているときは、手元に意識が集中しやすく、ドアの動きに注意が向かなくなります。
ドアパンチをされたときの対処法
ドアパンチをされたことに気付いたら、まずは警察に連絡することが重要です。ドアパンチをした加害者が、警察に連絡しないまま立ち去ってしまっている場合は当て逃げにあたり、交通事故として扱われます。
警察に事故の届け出をして実況見分に立ち会い、後日「交通事故証明書」の交付を受けます。
警察の手続きが終わったら保険会社に連絡し、修理について相談しましょう。加害者がわからない場合、修理費用は自分で出すか、車両保険を利用するかの2択になります。
車両保険を使うと、翌年度のノンフリート等級が3等級下がり、保険料が上がってしまうことに注意が必要です。事故有係数適用期間も3年加算されます。自動車保険を使うかどうかは任意なので、翌年以降の保険料の見積りを保険会社に出してもらってから考えるのがおすすめです。
なお、加害者が判明した場合は、加害者自身や加害者が加入する自動車保険の保険会社に対して損害賠償請求ができるので、自身の自動車保険を使う必要はありません。請求できるのは、車両の修理費や修理の間代車を借りるのにかかる実費となります。物損事故なので、慰謝料の請求はできません。
駐車車両へのドアパンチは、過失割合が加害者10割、被害者0割となる事故なので、被害者側の保険会社は示談交渉に参加することができません。被害者自身で加害者または加害者側の保険会社と交渉するか、弁護士に依頼することになります。
自動車保険の等級については、下記のページをご覧ください。
自動車保険の等級 下がるとどうなるの?下がる事故とは?ドアパンチをしてしまったときの対処法
自分がドアパンチをしてしまった場合は、被害者が近くにいるならまず謝罪し、相手の名前と住所、連絡先、車のナンバーなどを確認した後、警察に連絡します。警察の到着を待つあいだに、今後の損害賠償額の交渉に備えて、破損部位の写真も撮っておきましょう。
警察の手続きが終わったら、保険会社にも連絡します。トラブル防止のため、事故現場での当事者同士での示談交渉は避け、保険会社に任せるのが原則です。
被害者が近くにいない場合は、警察に連絡して実況見分を受けた後、保険会社に連絡という流れになります。もし、警察に連絡せずにその場を立ち去ると当て逃げになるので、必ず警察に連絡することが大切です。
ドアパンチの被害者になったときの注意点
ドアパンチの被害者になってしまったときには、ドライブレコーダーや監視カメラの映像を保存することと、ドアパンチの被害状況を撮影しておくことに注意が必要です。各注意点について、詳しく見ていきましょう。
加害者がわからない場合は、ドラレコ確認や駐車場の管理会社に相談する
ドアパンチの加害者が不明の場合は、できる限り、加害者につながる証拠を集めることが重要です。ドライブレコーダーや駐車場に設置された監視カメラの映像は重要な手掛かりになるので、保存して警察に提出しましょう。
なお、ドライブレコーダーの映像は、上書きで消えてしまわないように、忘れず保存しておくことが大切です。駐車場の監視カメラは、管理会社に事情を話して相談すれば、データを見せてもらえる場合があります。
ドアパンチされた破損箇所を撮影しておく
ドアパンチされた破損箇所は、撮影して写真を残しておきます。損傷の程度や具体的な箇所を詳細に記録することで、保険会社や修理業者に正確な情報を提供でき、適切な修理費用の見積りが可能になります。
写真を複数の角度から撮影し、全体像だけでなく細部も含めて記録することが重要です。
ドアパンチの加害者になったときの注意点
ドアパンチの加害者になってしまったときに注意したいのは、すみやかに警察に連絡することと、その場で示談交渉をしないことの2点です。当事者だけで解決しようとせず、警察や保険会社と連携することが重要です。
ドアパンチして立ち去ると、当て逃げとして処罰される
ドアパンチをしたにもかかわらず、警察に連絡しないまま立ち去ることは当て逃げにあたり、道路交通法72条第1項の「危険防止措置義務」や「事故報告義務」違反となります。これにより、罰金などの刑事処分、違反点数加算などの行政処分を受けることになります。
危険防止措置義務違反の罰則は1年以下の懲役または10万円以下の罰金、事故報告義務違反の罰則は3か月以下の懲役または5万円以下の罰金です。これらのほか、もちろん被害者への損害賠償も発生します。
示談交渉は保険会社に任せる
事故現場で、被害者と示談交渉をするのはやめましょう。その場では修理にかかる正確な金額はわかりません。安易に「修理費は全額負担する」といった口約束をしてしまうと、後に多額の修理費を請求されるなどのトラブルに発展するリスクが高まります。
当事者間で解決しようとせず、示談交渉は保険会社に任せるのが原則です。
ドアパンチをされないための対策
ドアパンチは、加害者のミスや不注意などで起こるものなので、被害者がどれだけ気を付けても100%防ぎきることはできません。
しかし、駐車の際に下記のような点に配慮しておくことで、ドアパンチの被害にあうリスクを減らすことはできます。
広いスペースや駐車場の端などに駐車する
ドアパンチを受けるリスクは、隣の車との距離が近いほど高くなるので、駐車場ではできる限り広く空いているスペースに駐車すると安心です。隣に車がとまらない角のスペースや、左右に壁や柱があるスペースに駐車するのもおすすめです。
反対に、駐車スペースの片方に寄っている車や斜めになっている車の隣は、避けたほうが無難です。傷やへこみが多い車は、普段から車の扱いに慎重でないドライバーの可能性が高いので、隣に駐車するのは避けましょう。
混雑していない駐車場を選ぶ
駐車場が混雑していると、駐車スペースを選べず、隣の車との距離も近くなって、必然的にドアパンチの被害にあうリスクも高まります。
選択肢がない場合も多いものの、混雑する場所や時間は避ける、少し遠くても広い駐車スペースを探すなどの工夫によって、ドアパンチを予防できます。
隣の車の車種を確認する
隣の車がスライドドア方式なら、ドアパンチの被害にはあいません。反対に、ドアが大きかったり、長かったりする大型車の隣だと、ドアパンチにあう可能性も高まるので、大型車の隣は避ける習慣を付けるとリスクを軽減できます。
ほかに空きスペースがないなどの理由で、大型車の横に駐車する場合は、できる限り隣の車とのスペースを広く空けておくことが重要です。
当て逃げされた際の自動車保険の補償については、下記のページをご覧ください。
車両保険で当て逃げは補償される?ドアパンチをしないための対策
ドアパンチの加害者にならないためには、下記のような点に注意することが大切です。日ごろから気を付けることで、トラブルを未然に回避できます。
子どもなど同乗者に注意を促す
運転者は気を付けていても、子どもや同乗者がドアを勢いよく開けてしまうことがあります。「ドアを開ける前に隣に車がとまっていることを伝えて、ゆっくり開けるように促す」「隣に車がとまっているときは子どもにドアを開けさせないで、大人が対応する」などの対策が有効です。
特に、風の強い日や駐車スペースが狭い場合は、運転者が必ず注意を促す習慣を身に付けることが大切です。
風上に向かって駐車する
風下に頭を向けて駐車すると、突風でドアが勢いよく開いてしまい、ドアパンチが起こりやすくなります。風の強い日は、頭を風上に向けて駐車することがポイントです。
風の影響を最小限に抑えるためには、駐車場所を選ぶ際に建物や高い塀など、風をさえぎるものがある場所を選ぶとさらに効果的です。
荷物の扱いに配慮する
荷物の搬出・搬入で両手がふさがっていると、突風などでドアがあおられたときに対応できません。また、荷物の出し入れに集中しているうちに、不意にドアを強く開けてしまい、ドアパンチしてしまうこともありえます。
荷物を出し入れするときは、できるだけ同乗者に手伝ってもらいましょう。荷物とドアの両方に一人で対応しなくて済むようにすれば、ドアパンチのリスクを軽減できます。
ドアパンチをしないための対策
ドアパンチへの備えには、自動車保険への加入がおすすめ
ドアパンチは、日常にありふれた事故の1つであり、誰でも加害者や被害者になりうるものです。小さな傷でも修理費が高く付く場合もあり、修理期間中の代車費用まで合わせると、大きな出費になりかねません。
対策としては、ご紹介したようなドアパンチの加害者や被害者になりにくい行動を心掛けるとともに、いつ当事者になっても慌てないように、あらかじめ自動車保険に加入しておくのがおすすめです。
いざというときは保険会社に連絡すれば、加害者の場合は対物賠償保険で、加害者不明の被害者の場合は車両保険で補償されます。
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執筆年月日:2024年9月25日