自動車を運転するにあたって「もしも自動車保険に加入していない相手との事故にあってしまったらどうなるの?」という不安を持っている方もいるでしょう。無保険車との事故にあった場合、十分な損害賠償を受けられない可能性があるので、対処法や対策を知っておくことはとても大切です。
本記事では、無保険車との事故にあった場合のリスクや備えておくべき対策、無保険車との事故にあった際に役立つ自動車保険についてわかりやすく解説します。無保険車との事故にあってしまい困っている方や、無保険車との事故に備えたい方は参考にしてみてください。
目次
交通事故の相手が無保険だったら補償は受けられるのか?
無保険車とは、一般的に任意保険に加入していない自動車のことをいいます。任意保険とは、自動車の保有者が強制的に加入する自賠責保険にプラスして、自らの意志で加入する自動車保険のことです。
交通事故を起こした際、自賠責保険だけでは補償金額や補償範囲が不十分なことが多く、任意保険はその不足分をカバーする役割を持っています。
任意保険で多くの人が加入する「対人賠償保険(相手方の「人」に対する補償)」の加入率は約75%(共済保険を含めると88.7%)、つまり約10%は任意保険または共済保険に加入していないことになります。
無保険車との交通事故にあった場合、相手からどの程度の補償(賠償金)を受け取れるかは、相手の支払能力や自賠責保険の加入の有無、事故の状況(損害の内容や過失割合など)によって変わってきます。
任意保険への加入はなく、自賠責保険のみ加入している場合
事故の相手が自賠責保険にしか加入していない場合、自賠責保険から事故の被害者に対人部分のみの賠償金が支払われます。自賠責保険とは、事故の被害者を救済する目的で、自動車を保有する人に加入が義務付けられている保険です。ただし、自賠責保険のみでは事故の被害者の受けられる補償が多くの場合、不十分となることが懸念されます。
自賠責保険の損害賠償は、事故の被害者の損害に応じて、以下のとおり支払限度額が定められています。
自賠責保険の支払限度額
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損害の内容 | ||||
---|---|---|---|---|
傷害 (ケガ) |
後遺障害 | 死亡 | 死亡に至るまでの傷害(ケガ) | |
損害賠償の範囲 | 治療関係費 文書料 休業損害 慰謝料 |
逸失利益 慰謝料等 |
葬儀費 逸失利益 慰謝料 |
傷害による 損害の場合と 同じ |
支払限度額 (被害者1名あたり) |
最高 120万円 |
後遺障害の 程度に応じて 75万円〜 4,000万円(※) |
最高 3,000万円 |
最高 120万円 |
-
※神経系統・精神・胸腹部臓器に著しい障害を残して介護が必要な場合
常時介護(第1級):最高4,000万円/随時介護(第2級):最高3,000万円 -
※上記以外の後遺障害
最高3,000万円(第1級)〜最高75万円(第14級)
出典: 国土交通省 自賠責・共済ポータルサイト「限度額と保障内容」を加工して作成
任意保険と自賠責保険のどちらにも加入していない場合
事故の相手が期限切れなどで自賠責保険に加入していない場合、自賠責保険から賠償金は支払われませんが、政府保障事業から損害賠償金を受け取れます。政府保障事業とは、無保険車との事故やひき逃げ事故にあい、自賠責保険の補償を受けられない被害者を救済するための国の制度です。ただし、自賠責保険と同様に対物補償はありません。
政府保障事業から支払われる保障金の限度額は自賠責保険と同じです。ただし事故の加害者側からの支払いや、ご自身が加入している健康保険・労働者災害補償保険(労災保険)からの給付がある場合は、これらを除いた金額が保障金の限度額となります。
請求の窓口は一部の損害保険会社(組合)です。国土交通省の自賠責保険ポータルサイトで受け付けている保険会社を確認のうえ、各支店等の窓口で必要書類を入手して提出しましょう。
無保険車と交通事故にあってしまった被害者側のリスクとは?
無保険車と事故にあってしまった場合、被害者には以下の点で、任意保険に加入している自動車との事故以上の負担を被る可能性があります。
適正な賠償金や慰謝料を受け取れない可能性がある
事故の加害者が無保険で賠償金の支払能力がない場合、治療などにかかった費用の全額や被害状況に見合った慰謝料が受け取れない可能性があります。また事故の加害者が賠償金を一括で支払えない場合、分割での支払いを容認しなければならない場合もあるでしょう。
特に自賠責保険の支払限度額を超える被害を受けた場合や、後遺障害が残ってしまった場合などに十分な補償が受けられない可能性があります。
加害者と直接示談交渉をしなければいけない場合がある
通常、事故の加害者が任意保険に加入していれば、加害者側の保険会社が示談交渉の対応をしてくれます。しかし加害者が無保険で被害者側にまったく過失がない場合、直接相手と示談交渉をしなければなりません。そのため、交渉中に加害者と連絡が取れなくなるなどのリスクもあるのです。
自動車の損害額を払ってもらえない可能性がある
前述のとおり、自賠責保険の補償は人身事故に対する損害賠償です。対物補償(物に対する補償)はないため、その分の損害賠償は加害者に請求するしかありません。
また加害者が自己破産してしまうと、物損分の損害賠償請求ができなくなってしまう可能性があります。さらに、軽度なスピード違反や脇見運転など「悪意があるとまではいえない」通常の過失や不注意による事故の慰謝料は支払われない場合もあります。
交通事故の相手が無保険だったら泣き寝入りするしかないのか?
自賠責保険と政府保障事業からの損害賠償は人身傷害に限定されており、受け取れる金額にも損害の内容に応じて上限があります。無保険車との事故で自賠責保険や政府保障事業から十分な補償が受け取れない場合、不足する金額分は泣き寝入りするしかないのでしょうか?
そのような場合、ご自身が加入している任意保険や社会保険から補償が受けられる場合があります。無保険車との事故で治療が必要な場合は、医療機関の窓口に事情を説明して、健康保険(勤務中や通勤中の事故は労災保険)を使用するよう申し出ましょう。なお、その場合、加入している健康保険組合(国民健康保険の方は市区町村の窓口)に「第三者行為による傷病届」という書類を出す必要があります。
また加害者との示談交渉が進まず損害賠償を受け取れそうにない場合は、裁判を起こす方法もあります。損害賠償の請求が認められれば、事故の加害者の財産を差し押さえることができるようになります。
無保険車との事故の際に役立つ任意保険とは?
前述のとおり無保険車との事故にはさまざまなリスクがあるため、ご自身の任意保険で備えておく必要があります。無事故車との事故にあった場合、補償を受けられる任意保険には以下のようなものがあります。賠償金の不足分を泣き寝入りしないために、それぞれの特徴を知って、ご自身に合った保険に加入しておきましょう。
無保険車傷害保険
無保険車傷害保険とは、無保険車や、補償内容が不十分な自動車との事故にあった場合に補償が受けられる保険です。契約自動車に乗車していた方が上記の自動車との事故により、死亡または後遺障害を負った場合に保険金が受け取れます。
無保険車傷害保険の保険金は2億円や無制限に設定されている保険会社が多いため、事故による損害額が高額になり、加害者側から十分な補償を受け取れない場合にも役立ちます。
搭乗者傷害保険
搭乗者傷害保険は、契約自動車の事故により、乗車中の方が亡くなられた場合やケガをされた場合に死亡保険金、医療保険金など定額の補償が受けられる保険です。無保険車との事故の際にも補償の対象となります。
後述する人身傷害保険と異なり所定の条件に応じて決められた金額が支払われるため、治療が完了していない場合でも比較的スピーディーに補償が受けられます。
人身傷害保険
人身傷害保険とは、自動車の事故により乗車中の方が亡くなられた場合、またはケガをされた場合などに補償が受けられる保険です。ご契約時に決めた補償限度額の範囲内で治療費や休業損害・逸失利益などが支払われます。ただし、自賠責保険や事故の加害者などから損害賠償が受けられる場合、受け取れる金額はそれらを差し引いた額となります。
搭乗者傷害保険との主な違いは、「補償の対象となる事故」「補償の対象となる方」「補償内容」の3点です。SBI損保の自動車保険では以下のような違いがあります。
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人身傷害保険 「自動車事故補償」 |
人身傷害保険 「契約自動車搭乗中のみ補償」 |
搭乗者傷害保険 | |
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補償の対象 となる事故 |
自動車事故により、補償の対象となる方が死傷された場合に補償の対象となります。 | 契約自動車に搭乗しているときの事故によって死傷した場合のみ、補償の対象となります。 | 契約自動車に搭乗しているときの事故によって死傷した場合のみ、補償の対象となります。 |
補償の対象 となる方 |
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契約自動車に 搭乗中の方 |
契約自動車に 搭乗中の方 |
補償内容 | ケガをした場合の治療費や休業損害、死亡した場合の逸失利益などが補償されます。 (ご契約金額がお支払額限度) |
ケガをした場合の治療費や休業損害、死亡した場合の逸失利益などが補償されます。 (ご契約金額がお支払額限度) |
ケガなどによる死亡・後遺障害・入院・通院などに応じて、一定の金額が支払われます。 (あらかじめ設定された金額) |
- *法人のご契約では「契約自動車搭乗中のみ補償」となります。
車両保険
車両保険は、契約自動車が事故によって壊れてしまった場合や盗難被害にあった場合などに補償が受けられます。自賠責保険も政府保障事業も人身事故にあった場合の損害賠償に限られるため、ご自身の自動車の損害に備えるなら車両保険へ加入するのも一案です。
車両保険に加入することで保険料負担が重くなるのが心配な方もいるでしょう。しかし補償範囲を限定した「車対車+限定A(エコノミー型)」に加入したり、無理のない範囲で自己負担額を高めに設定したりすることで保険料を抑えることも可能です。ご自身の状況に合わせてご契約内容を検討しましょう。
無保険車との交通事故に関するよくある質問
ここでは無保険車との事故に関するよくある質問に対して回答します。同じような疑問をお持ちの方は参考にしてみてください。
無保険車との事故の場合に弁護士特約は使える?
無保険車との事故の場合でも弁護士特約は使えます。弁護士特約とは、他人に損害賠償を請求する際などに弁護士に依頼する費用や訴訟費用を補償してくれる特約(オプション)です。
ご自身の自動車保険に弁護士特約を付けていれば、加害者との示談交渉や裁判を起こす際の自己負担額を抑えられるでしょう。
万が一自分が無保険の状態で事故を起こしてしまったらどうなる?
ご自身が事故の加害者となり無保険だった場合、自賠責保険で支払えない分の賠償金は事故の被害者から請求されることになります。
また事故の被害者との示談交渉が進まない場合、裁判などによって財産が差し押さえられることがあるので注意しましょう。損害賠償額が高額になり自己破産したとしても、加害者側に重大な過失などがある場合は人的損害(被害者の死亡やケガ)に対する損害賠償金はなくなりません。
このようなリスクがあるため、万が一の事故に備えて任意保険に加入しておくことは非常に大切です。
まとめ
交通事故の相手(加害者)が無保険であった場合、自賠責保険もしくは政府保障事業制度から最低限の補償(賠償金)を受け取ることができます。それらで補償されない部分に関しては、示談交渉や裁判によって加害者に賠償を求める方法と、ご自身が加入する保険(任意保険、健康保険など)から補償を受ける方法があります。
無保険車の加害者に賠償を求める場合、相手に支払能力がなければ適正な賠償金額を受け取れない可能性もあります。そのような場合に備えて、無保険車との交通事故の際に役立つ任意保険に加入しておくとよいでしょう。
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執筆年月日:2024年6月21日