『車両の水没』というテーマで少しお話をしましょう。
自分の車が水に沈む・・・、このような場面、想像できるでしょうか?
身近なリスクとしては考えづらく、自分には縁遠いと思われる人も多いかと思います。ですが、『車両の水没』は、実はそれほど珍しいことではありません。
水没の原因である『水災』
車の水没は、水災によってもたらされることが多いです。
水災とは自然災害のひとつであり、台風や豪雨などによる洪水、高潮、土砂崩れなどを表します。
日本は世界平均の約2倍もの降水量があり、また、年間を通じて、5月から7月の梅雨期や9月から10月の台風期に集中しています。それによってもたらされる被害も多く、日本に住む私たちにとって、水災は他人事ではないのです。
「平成30年7月豪雨」、いわゆる「西日本豪雨」では、死者数が100人を超え、平成最悪の浸水被害を記録しました。近年発生した豪雨による水災の例を見てみましょう。
- ・平成30年7月豪雨(死者224名、床上浸水8,567棟、床下浸水21,913棟)
- ・平成29年7月九州北部豪雨(死者40名、床上浸水180棟、床下浸水1,481棟)
- ・平成27年関東・東北豪雨(死者20名、床上浸水2,523棟、床下浸水13,259棟)
- ・平成26年8月豪雨(死者6名、床上浸水1,562棟、床下浸水4,402棟)
- ・平成24年7月九州北部豪雨(死者30名、床上浸水3,298棟、床下浸水9,308棟)
- ・平成23年7月新潟・福島豪雨(死者4名、床上浸水1,082棟、床下浸水7,858棟)
- ・平成21年7月中国・九州北部豪雨(死者31名、床上浸水2,180棟、床下浸水9,229棟)
- ・平成20年8月末豪雨(死者2名、床上浸水3,106棟、床下浸水19,355棟)
(出典:内閣府 防災情報ページ 「災害状況一覧」より)
このように、豪雨だけでも毎年のように日本のどこかで発生しており、それ以外の水災も含めると、被害の件数はさらに大きくなるでしょう。水災は建物や土地だけでなく人命にまで及ぶ被害をもたらしています。もちろん、車も無関係ではありません。
- ・ゲリラ豪雨によって機械式駐車場の地下に大量の水が流れ込み、駐車していた車が水没した。
- ・台風で近所の川が増水し、自宅に停めていた車が水没した。
などなど、水災が起きるたびに、車の被害報告が保険会社には多数寄せられます。
水没した車、修理できる?
車が水没した場合、損傷によっては修理不能となることもあります。修理可能な場合でも、その金額が高額になる傾向があります。
ボディの傷に対する修理費用、室内のクリーニング費用や消臭費用などはもちろんですが、修理費用が跳ね上がる要因は排気系・電気系統へのダメージです。
マフラー(排気口)のあたりまで浸水した場合、燃焼したガスが排出されず、エンジンが止まってしまいます。エンジンは水没してしまった場合、基本的には交換となります。また、車は、エンジンをはじめトランスミッション、エアバックなどの様々な装置が、ECUというコンピューターによって制御されています。ECUが故障してしまうと、各装置に影響が及び、非常に高額な修理費用となり、こちらも修理不可能となるケースが多くあります。このECUは床の下に搭載されていることが多いので、ドアの半分以上の高さまで浸水すると、かなり危険です。
このように、車が屋根までどっぷりと水没しなかった場合でも、シート辺りまで水につかってしまうと、驚くほどの修理費用となることがあります。
水没被害は車両保険で補償
大雨、洪水、暴風、高潮など毎年のように起こる水災。これらによる被害で、車を修理するとなると、高額な費用となる可能性がありますが、この場合車両保険から保険金が支払われます。
SBI損保では、「一般車両保険」と「車対車+限定A(エコノミー車両保険)」の2種類の車両保険があり、それぞれ補償の範囲が異なりますが、水災による損害はどちらのタイプでも補償の対象になります。
一般車両 | 車対車+限定A | |
---|---|---|
車やバイクとの衝突・接触 | ○ | ○※ |
自転車との衝突・接触 | ○ | × |
電柱・建物などとの衝突や接触 (単独事故) |
○ | × |
あて逃げ | ○ | × |
転覆・墜落 | ○ | × |
火災・爆発・台風・洪水・高潮など | ○ | ○ |
盗難・いたずら・落書き | ○ | ○ |
窓ガラスの損害・飛び石による損害 | ○ | ○ |
「○」:補償されます。「×」:補償されません。
- ※「車対車+限定A」の場合は相手の車とその運転者または所有者が確認できる場合に限ります。
車両保険は、契約する際に免責金額(自己負担額)を設定します。
車の修理が可能で、修理費用が車両保険金額の範囲内に収まる場合は、免責金額を差し引いた車両保険金が支払われます。
修理不能となった場合、あるいは損害が大きく、修理費用が車両保険金額を上回る場合は、免責金額にかかわらず、契約時に設定した車両保険金額が支払われます。
それでは保険を使用した場合、次年度以降の保険料はどうなるのでしょうか。
車両保険を使ったら何等級ダウンする?
個人で加入する自動車保険は、「ノンフリート等級」という区分で保険料の割増引率が定められています。
無事故で1年が経過すると、翌年の等級がひとつ上がり、保険料の割引率も上がります。
逆に、事故により保険を使用すると、翌年の等級がダウン、事故有係数が適用され、保険料の割引率が下がります。事故の種類によって、3等級ダウン、1等級ダウン、ノーカウントのいずれかが適用されますが、台風・洪水・高潮などの水災による保険金請求の場合は1等級ダウンとなります。尚、同じ水災であっても、津波による水災については地震を原因とする損害となりますので、車両保険であっても補償の対象外となり、注意が必要です。
近年、豪雨を伝えるニュースで「記録的」という言葉をよく耳にするようになりました。
地球温暖化の影響から今後ますます降水量は増え、洪水の発生率は高まると言われています。
水災により車が損害を受けると経済的にも大きなダメージをうける可能性があります。ぜひ車両保険のご加入を検討してみてください。