自損事故を起こしてしまった場合、自賠責保険または自動車保険(任意保険)の補償を受けられるのでしょうか。自損事故とは何かを整理した上で、実際に起こりうる事故の事例を交えながら、自損事故の補償を詳しくご説明いたします。
目次
自損事故(単独事故)ってどのような事故?
自損事故とは、たとえば、ブレーキとアクセルを踏み間違えて電柱に衝突してしまった場合や自宅の車庫に自動車を停めようとしたら運転操作を誤って工作物などを壊してしまった場合など、運転者が自ら単独で起こした事故のことをいいます。つまり、事故の当事者がご自身だけで、相手方が存在しない単独での事故になります。
自損事故(単独事故)を起こしたら、まずすべきこと
自損事故は相手が存在しない単独事故ではありますが、事故を起こした後に何も対応しなくてよいという訳ではありません。ここでは、自損事故(単独事故)発生時、最初に必要となる3つの行動について以下に紹介します。
- ・危険防止措置の実施
事故の衝撃により、自動車や公共物の破片などが周辺に散らばることも十分にあり得ます。しかし破片などを放置して去ってしまうと、後続車が二次被害に巻き込まれる可能性があります。そのような事態を想定し、すみやかに危険防止の措置をとらなければなりません。 危険防止措置とは、危険を防止するために二次被害のリスクがある破片などを道路から撤去し、状況によっては後続車の誘導が行うことを指します。危険防止措置義務として道路交通法の第72条に定められており、怠ると懲役や罰金の対象になる場合があります。 - ・警察への報告
二次被害が発生せず、自分以外への影響がなくても交通事故を起こしたことに違いはありません。そのため、道路交通法の第72条に従って、その事実を警察に伝える必要があります。事故の場所や日時をはじめとして、損壊物の有無や負傷の程度など、関連事項を詳しく伝えることが重要です。この報告を省略すると、保険の補償を受けられない可能性もあるため、注意しましょう。 - ・病院で受診
負傷した場合はもちろん、そうでない場合も医師に診てもらうことが推奨されます。なぜなら事故直後は自覚症状がなくても、しばらくして症状が現れる可能性があるからです。また受診日が事故の発生日から経過していると、負傷の原因ができず、保険の補償を受けられないリスクもあります。事故との因果関係を証明するためにも、早めに病院を受診しましょう。
自損事故(単独事故)のときの保険の補償は?
自損事故を起こした場合、保険による補償を受けることはできるのでしょうか。自賠責保険と自動車保険の2種類の車の保険について、それぞれの補償内容を確認していきましょう。
自賠責保険
自賠責保険は、自動車事故の被害者救済が目的であり、補償範囲は対人事故における相手方の損害賠償のみになります。そのため、自損事故による物損や運転手自身の死傷に対して自賠責保険からの補償を受けることはできません。ただし、同乗者がけがをした場合は自賠責保険から補償を受けることができます。
自動車保険
自動車保険に加入して、自損事故に対応する補償を付けていれば、補償を受けることができます。自損事故で、人の死傷に対する補償(治療費や死亡保険金の補償)は「人身傷害保険」と「自損傷害保険」および「搭乗者傷害保険」があります。「人身傷害保険」は契約自動車の事故により乗っていた人が死傷した場合に保険金が支払われる保険です。自損事故のほか、相手方が存在する事故で相手方に過失がない事故であっても補償の対象となります。一方「自損傷害保険」は、人身傷害保険が適用不可で、自損事故によって運転している人が死傷した場合に保険金が支払われる保険です。人身傷害保険と自損傷害保険のどちらも適用できる場合は、人身傷害保険が優先的に適用されます。(*SBI損保では、人身傷害保険をセットしている場合は、自損傷害保険はセットなしとなります。)
また、「搭乗者傷害保険」は「人身傷害保険」同様に、契約自動車に乗っていた人が事故によって死傷した場合に保険金が支払われる保険であり、人身傷害保険がセットされていても両方の保険からも保険金が支払われます。「搭乗者傷害保険」はあらかじめ設定された定額が支払われるので、実際にかかった費用や損害での補償となる「人身傷害保険」よりもスピーディーに保険金の支払いを受けることができます。
一般的には「自損傷害保険」は契約時に自動でセットされる補償に含まれており、「人身傷害保険」、「搭乗者傷害保険」はオプションとなっていることが多いと思いますが、加入している自動車保険の補償内容(補償対象、保険金額など)はどうなっているかを確認しておきましょう。
自損事故(単独事故)の場合に気を付けるべきポイント
自損事故における運転者本人や搭乗者の死傷について、任意保険であれば補償を受けられることをご説明しましたが、気を付けるべきポイントにはどのようなものがあるのでしょうか。
先程ご説明した「人身傷害保険」と「自損傷害保険」は人の死傷に対する補償(治療費や死亡保険金の補償)です。自損事故による物損は、自動車保険に対物賠償保険や車両保険を付けていないと補償を受けられませんので、注意しましょう。なお、車両保険については自損事故を対象としていない保険もあります。
また、自損事故であっても、事故を起こした場合には警察に届出を行って交通事故証明書の交付を受ける必要があります。交通事故証明書がなければ、自動車保険の補償対象となっていても補償を受けることができない場合がありますので、注意しましょう。
もちろん、運転している人の故意、重大な過失(※)によって起こした事故については補償を受けることができません。
※故意、重大な過失の一例
- ・麻薬、大麻などの影響で正常な運転ができないおそれがある状態での事故
- ・酒気帯び運転に相当する状態での事故
- ・盗難車での事故
事故事例1:自損事故で電柱に衝突してしまった場合
自損事故で電柱に衝突し、電柱に傷を付け、契約自動車も破損してしまった場合、自動車保険からどのような補償を受けることができるか考えてみましょう。
- 【衝突してしまった電柱】
電柱に衝突し傷を付けて損害賠償責任が生じた場合、対物賠償保険からの補償を受けることができます。 - 【破損した自分の車】
運転していた自動車が破損してしまった場合には、車両保険から補償を受けることができます。 - 【運転者・同乗者】
自損事故によって、運転している人や同乗者が死傷してしまった場合には、人身傷害保険から補償を受けることができます。
事故事例2:自損事故で自宅の車庫を壊してしまった場合
自損事故で自宅の車庫を壊し、契約自動車も破損してしまった場合、自動車保険からどんな補償を受けることができるか考えてみましょう。
- 【壊してしまった自宅の車庫】
自損事故で、運転している人の自宅や車庫に接触または衝突して破損させてしまった場合、対物賠償保険では補償を受けることができません。自宅や車庫の修理費用に対する補償を受けるためには、自宅・車庫等修理費用補償特約をセットしておく必要があります。 - 【破損した自分の車】
運転していた自動車が破損してしまった場合には、車両保険から補償を受けることができます。ただし場合によっては、車両保険では自損事故が適用外となることもありますので注意しましょう。 - 【運転者・同乗者】
自損事故によって、運転している人や同乗者が死傷してしまった場合には、人身傷害保険から補償を受けることができます。
自損事故(単独事故)と自動車保険に関するよくある質問
自損事故と自動車保険について、よくある質問にお答えします。
- 自損事故における保険金額の限度額はいくらでしょうか?
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自損事故に関する具体的な補償は、保険会社や契約内容によって異なるため、一概にはいえません。
SBI損保の自動車保険の場合、自損傷害保険の保険金額は被保険者1名につき1,500万円(介護を要する重度後遺障害の場合は2,000万円)となります。
- 自損事故の場合、自動車保険の請求期間はどのくらいですか?
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自損事故で保険金を受け取りたい場合は、原則3年が経過する前に請求しなければなりません。なぜなら、保険金請求権には3年という時効があるからです。年月が経つにつれて事故の状況を把握しづらくなるため、このような時効が設けられています。
- 自損事故を起こしてしまった場合、保険会社への連絡はいつすればいいですか?
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保険会社への連絡は、危険防止措置など必要な対応を一通り終えてから、安全な場所で行いましょう。ただし、自動車保険の付帯サービスとして事故対応のサポートが用意されていることもあります。そのため、状況によっては早いタイミングで連絡して、サポートを活用するのもよいでしょう。
まとめ
自損事故とは何か、自損事故に対してどのように備えておけばよいかをご理解いただけたでしょうか。誰でも、疲れているときなどにうっかり運転操作を誤ってしまうことはあり得ます。この機会に、自損事故への備えについて、加入中の自動車保険の補償内容を確認してみてはいかがでしょうか。
- *2022年12月31日以前の契約では、補償・特約名称、内容が一部異なる場合があります。
執筆年月:2018年5月
(最終更新日:2023年7月7日)