自動車に関する盗難事件は大きく分けると、「車両盗難」と「車上荒らし」があります。
「車両盗難」は文字通り、車両自体が盗難されることをいいますが、「車上荒らし」は、車両のパーツや積載物が窃盗されることをいいます。「車上荒らし」は、言葉のイメージから、ガラスが割られ、車内が荒らされているような状態を想像しがちですが、やはりほとんどは窃盗目的であり、まれに嫌がらせ目的ということもあります。
ここでは「車上荒らし」についてお話していきます。
車上荒らしの種類・事例
車上荒らしによる被害の多くは、転売目的での車のパーツの盗難(車外パーツと車内パーツ)になります。
車外のパーツではタイヤホイール、ドアミラー、バンパーなど、また車内のパーツではカーナビなどが代表的な被害物となります。
一方で、車載物の被害はアクセサリー、現金、ゴルフバックなどが主で、現金以外では高額なものが盗まれる事例が多いようです。しかしながら、1台ずつ車の中を覗いてターゲットを物色することは目立ってしまうので、車内の目立つ場所に高価なものを置いていない限りは、車載物は比較的盗まれにくいといえるでしょう。
やはり車のパーツのほうが、車種によってターゲットを絞りやすく、かつ取り外して持ち去ることも容易であるため、盗まれやすい傾向にあります。
車上荒らしにあったら車両保険で補償されるか
それではもし車上荒らしの被害にあった場合、車両保険で補償はされるのでしょうか?
被害対象が「車のパーツ」と「車載物」のどちらであるかによって、答えが異なります。1つずつご説明していきましょう。
車のパーツの盗難は、車両保険での補償の対象となります。パーツ=車両の一部と判断されるものであり、たとえばカーナビの場合、車に固定されている場合には、純正以外の製品も対象となります。しかし、ポータブルナビなどのように持ち歩きができるものは「車両の一部」とみなされず、車両保険の補償対象外となるので、注意が必要です。なお、タイヤも同様で、車に装着している状態で盗まれた場合は、車両の一部として補償の対象となりますが、車から取り外しているときに盗まれた場合は補償対象とはなりません。
次に、車載物の盗難についてです。こちらは残念ながら車両保険の補償の対象とはなりません。よって、車載物の盗難に備えるには、特約を付帯する必要があります。保険会社によって名称は異なりますが、SBI損保では「車内外身の回り品補償特約」といい、契約自動車で外出中に携行していた身の回りの品が盗難にあった場合などに、保険金を受け取ることができます。ただし、この特約を付けていても、アクセサリーや現金などは補償の対象外となります。
なお、盗難にあたって車の窓ガラスを割られたり、鍵穴が壊された場合・・・、こちらは仮に盗難被害はなかったとしても、車両保険での補償の対象となりますのでご安心ください。
以上をまとめると、車上荒らしに対しては、
- ・車のパーツは車両保険で補償
- ・車載物は車両保険では補償されない(ただし特約で補償可能)
となります。いずれも例外はありますので、詳細は必ず各保険会社のWebサイトや約款などで確認しましょう。
車両保険は使うべき?
保険金の支払を受けると、翌年度のノンフリート等級がダウンします。それでは車両保険金請求をした場合は、何等級下がるのでしょうか。
盗難被害による車両保険金請求の場合には、翌年の契約のノンフリート等級が1等級ダウンとなります。なお、車載物の盗難の場合には、「車内外身の回り品補償特約」のみによる保険金の支払であれば「ノーカウント事故」(事故がなかった場合と同様の扱い)となります。
等級がダウンすると保険料の割引率が小さくなり、さらに「事故あり」の係数が加算されるため、翌年の保険料負担が大きくなります。
もし盗難被害にあってしまったら、その被害額と、等級ダウンによりアップする保険料、この二つを比べてみてください。場合によっては保険を使わないほうが、最終的な支出が少ないということもありえます。
有効な車上荒らし対策とは?
車上荒らしに備えて保険をかけておくことは大切ですが、そもそも車上荒らしにあわないように日ごろから対策をしておくことはさらに大切です。
『車上荒らし』にあいやすい場所はどこでしょうか。駐車場、自宅、路上に分類すると、一番被害件数が多いのは、駐車場であり、6割以上を占めています。やはり人気がなく、目立ちにくいというのが理由でしょう。
被害件数についてはまだ多くの報告がありますが、実は10年前と件数を比較すると20%から25%程度減少傾向にあります。減少理由として、街中に設置される防犯カメラが増えたこと、そして車へのセキュリティ対策の強化が影響しているようです。 被害防止に一定の効果をみせている車へのセキュリティ対策は、ぜひ実践をおすすめします。
最新の車種では、車両盗難などの異常察知や位置追跡を行えるなど、充実したセキュリティ機能が標準装備されている車も多くあります。もしそういった装置が搭載されていない車種にお乗りの場合でも、現在は多数の防犯グッズが販売されていますので、対策を講じることは可能です。
自分で車に装着できる防犯グッズとしては、盗難防止ブザーや盗難防止機能が付いたドライブレコーダーなどがあります。先程、車上荒らしにあいやすい場所として、人気のない駐車場をあげましたが、大音量の防犯ブザーでの威嚇は非常に有効です。
また、安価かつ簡単に取り入れられるものとして、防犯ステッカーがあります。『盗難防止機能作動中』など、盗難に対する意識が高いことを視覚的にアピールすることができるので、被害防止に大きな効果を発揮するでしょう。
最後になりますが、万が一車上荒らしの被害にあってしまったら、ささいな被害でもすぐに警察に届け出ましょう。
犯人追跡のためという理由はもちろんですが、保険金お支払いのためには警察の発行する交通事故証明書が必要になります。また、通報することにより、エリアの警備、近隣住民や店舗の防犯意識のいずれも強化され、次の犯罪の未然防止につながります。
車上荒らしに限らず、事故の発生から解決までの流れを理解しておけば、いざという時に適切かつ余裕を持った行動を取ることができます。保険会社の連絡先などを含め、一度整理しておくのもよいでしょう。