万が一事故に遭ったときのことを考えると自動車保険の補償内容を充実させた方がよいことはわかっていても、自動車保険の保険料が高くなってしまうのは悩ましいと考える方もいらっしゃるでしょう。運転者の範囲を家族限定や本人・配偶者限定などに絞ることで保険料を節約できることはご存知でしょうか。そこで今回は家族限定の概要、家族の範囲等を整理して解説します。
運転者の家族限定とは?
自動車保険に加入する際、運転者限定特約を付帯することで、運転者本人限定・配偶者限定、運転者家族限定など補償される運転者の範囲を限定して契約をすることができます。運転する方を限定すると、補償範囲に含まれる方が契約自動車を運転中の事故に限り、保険金が支払われます。
運転者限定特約を付帯しない場合、不特定多数の方が運転する前提で自動車保険を契約することになります。そのため、その前提に基づいて使用頻度や走行距離等を考慮し、保険料設定がされることになります。
家族限定等の特約を付加すると、運転者が不特定多数であるときよりも、想定される自動車の利用回数や走行距離などが少なくなるため、事故に遭遇するリスクも低くなります。その分、保険料の割引が適用されることになるのです。
運転者家族限定における家族の範囲はどこまでを指すのか
家族限定の家族の範囲を誤って認識されている方も多いようです。改めて、運転者家族限定における家族限定が指す「家族」の範囲を整理しておきましょう。
本人・配偶者限定の場合、運転者の範囲は文字通り、本人または配偶者となります。
一方、運転者家族限定の家族の範囲はどこまでを指すのでしょう。
運転者家族限定での限定範囲は以下の通りです。
- (ア)記名被保険者
- (イ)記名被保険者の配偶者
- (ウ)記名被保険者またはその配偶者の同居の親族
同居の親族とは、一つの建物に同居している親族をいいます。親族とは、配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族です。 - (エ)記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子
別居とは同居ではないことを指し、住民票の記載の内容によらず、実態により判断されます。なお、未婚とは婚姻歴のない場合をいいます。
家族限定をつけたときは、年齢条件も確認
自動車保険には、家族運転者等の年齢条件に関する特約(運転者年齢条件)を付帯することもできます。運転者年齢条件とは、契約自動車を運転する方の年齢を限定することにより、保険料を割り引くものです。この年齢の区分は、保険会社ごとに異なります。
運転者家族限定に加えて、運転者年齢条件を付加した場合、年齢条件の適用を受けるのは記名被保険者とその配偶者、そして記名被保険者またはその配偶者の同居の親族です。
例えば、運転者家族限定かつ26歳以上補償の年齢条件を付加した自動車保険に加入している場合を考えてみましょう。記名被保険者である父(45歳)が所有する自動車を、大学進学等で実家を離れて暮らしている子ども(19歳)が帰省した際に運転する場合、誰が自動車保険の補償の対象となるでしょうか。
父親(記名被保険者)が所有する自動車を、記名被保険者である父または配偶者である母が運転した際、運転者が26歳以上なので補償対象となります。そして子どもについても、未婚であれば、「記名被保険者とその配偶者」、「記名被保険者またはその配偶者の同居の親族」のいずれにもあてはまらないため、26歳以上に該当しなくても補償の対象となります。
家族限定の注意点
家族限定等の特約を付加した場合、注意すべき点にはどんなことがあるでしょうか?家族限定の対象となる範囲について、正しく理解しておくことがまずは大切です。例えば先述したとおり、家族限定の対象となる範囲に、「記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子ども」が含まれますが、婚姻歴がある別居の独身の子どもは補償の対象となる範囲には含まれません。
なお運転者家族限定の補償範囲外の方が、家族限定特約が付加された自動車を運転した際に起こしてしまった事故については、自動車保険の補償対象外となってしまいます。もしそのような事態が生じてしまった場合には、その自動車の自賠責保険で相手方への人的損害賠償責任をカバーします。また、自動車を運転していた人が自動車保険に加入しており、他車運転危険補償特約を付加していた場合には、その保険から相手方に対して、対人・対物賠償責任をカバーすることもできます。
とはいえ、お金の面ではカバーできる部分があったとしても、運転していた人と自動車の本来の所有者(自動車を貸してくれた友人など)との関係性が崩れてしまうことも考えられます。家族限定を付加した自動車の扱いについては、家族で話し合っておくことも大切です。
家族限定等の特約を付加することで、自動車保険の保険料を節約できるというしくみをご紹介いたしました。しくみを正しく理解し、自動車保険の保険料の節約に取り組んでみてください。
執筆年月:2018年5月
(最終更新日:2022年6月17日)