自動車を運転するうえで、事故は誰にでも起こりうるものです。万が一、事故を起こして相手の車や物に損害を与えてしまった場合、高額の損害賠償責任を負う可能性があります。そうした事態に備えるための補償が、対物賠償保険です。
対物賠償保険は、車の事故で相手方の車や建物などに損害を与え、損害賠償責任を負った場合に修理費用などを補償します。電柱や信号機、ガードレールといった公共物への損害も補償対象です。
ただし、故意の事故で相手方の物に損害を与えた場合や、自分や家族の物に損害を与えた場合などは補償されないため、補償内容を正しく理解することが大切といえます。
そこで本記事では、対物賠償保険の補償の範囲について詳しく解説します。対物賠償保険の適切な保険金額についてもご説明しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
対物賠償保険は、自動車事故の相手方の物への損害を補償する保険
対物賠償保険とは、自動車事故により相手方の車や建物、店舗、公共物といった「物」に損害を与えた場合に、修理費用などの損害賠償金を補償する保険のことです。
たとえば、停車中の車に接触して壊してしまった場合や、ガードレール、電柱、信号機などを破損してしまった場合に、補償されます。
対物賠償保険は、自動車保険の基本的な補償です。なお、保険会社によっては、「対物賠償責任保険」と呼ばれることもあります。
対物賠償保険の対象となる運転者
対物賠償保険では、保険証券記載の「記名被保険者」だけでなく、その配偶者、親族、自動車を貸した方などが運転中の自動車事故も補償の対象です。SBI損保の場合、対物賠償保険の対象となる運転者は、下記のとおりです。
<対物賠償保険の対象となる運転者>
- 1.記名被保険者
- 2.契約自動車を使用または管理中の「記名被保険者の配偶者」「記名被保険者またはその配偶者の同居の親族」「記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子」のいずれかに該当する者
- 3.記名被保険者の承諾を得て契約自動車を使用または管理中の者(自動車取扱業者が業務として受託した契約自動車を使用または管理している間を除く)
- 4.1から3までのいずれかに該当する者が責任無能力者である場合は、その者の親権者、その他の法定の監督義務者および監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者(※1)。ただし、その責任無能力者に関する対人事故または対物事故に限る
- 5.記名被保険者の使用者(※2)。ただし、記名被保険者が契約自動車をその使用者(※2)の業務に使用している場合に限る
- ※1監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者は、その責任無能力者の親族に限ります。
- ※2請負契約、委任契約またはこれらに類似の契約に基づき記名被保険者の使用者に準ずる地位にある者を含みます。
対物賠償保険の補償対象となる損害
対物賠償保険では、自動車事故によって発生する「直接損害」と「間接損害」の2種類が補償の対象となります。直接損害とは、自動車事故によって物理的に壊れた物に対する損害のことです。たとえば、衝突により破損した自動車、建物、ガードレール、電柱などの修理費用を負担した場合の損害が該当します。
一方の間接損害は、自動車事故によって間接的に発生した損害のことです。たとえば、自動車事故によって店舗の一部が壊れ、その影響で営業停止となり、売上が減少した場合の「休業損害」などが該当します。また、自動車事故の相手方が車を修理に出した際に使うレンタカー費用を負担する場合も、間接損害となります。
対物賠償保険で補償されるケース
続いては、対物賠償保険ではどのようなケースで補償されるかを、詳しく見ていきましょう。対物賠償保険で補償されるケースは、主に下記のとおりです。
車同士の事故で相手の車を壊した
停車中の車に衝突して壊してしまった場合など、車同士の事故の修理費用は、対物賠償保険で補償されます。
たとえば、駐車場や信号待ちの列に停車している車にうっかり追突してしまった場合、自分の過失割合は基本的に100%となります。このような自動車事故では、相手方の車の修理費用や代車費用などが発生しますが、対物賠償保険に加入していれば、これらの費用を補償することが可能です。
車の修理費用は高額になることもあるため、こうしたケースに備える意味でも、対物賠償保険は必須といえるでしょう。
ガードレール、信号機、電柱などの公共物に衝突して壊した
ガードレール、信号機、電柱などに衝突し、壊してしまったケースも、対物賠償保険の補償対象となります。これらを破損した場合には自治体、電力会社といった管理者から高額な修理費用を請求されることが少なくありません。
こうしたケースへの備えとして、対物賠償保険への加入は必須といえます。
駐車の際に店舗に衝突して備品などを壊した
対物賠償保険では、店舗に駐車する際に誤って衝突し、建物や備品などを壊してしまったケースも補償対象となります。
また、このような自動車事故では、物の修理費用だけでなく、店舗が営業できなくなることによる休業損害、すなわち間接損害も発生する可能性があります。対物賠償保険ではこうしたケースも補償対象となるため、万一の場合にも安心です。
踏切の事故で電車を止めた
車で踏切を通過する前に遮断機が下り、電車を止めてしまうと、運休に伴う振替輸送費や遅延損害が発生します。対物賠償保険では、こうした損害も補償対象となります。
振替輸送費、遅延損害の損害賠償額は莫大になる可能性があるため、対物賠償保険で備えておく必要性は高いといえるでしょう。
対物賠償保険で補償されないケース
対物賠償保険に加入すると、自動車事故によって物に損害を与え、損害賠償責任を負った場合に補償を受けられますが、ケースによっては補償されないこともあります。対物賠償保険で補償されない主なケースは、下記のとおりです。
故意による事故で生じた損害
故意による事故で修理費用などの損害が発生した場合は、対物賠償保険で補償されません。
対物賠償保険は、偶然の事故によって生じた損害を補償する保険です。そのため、被保険者が意図的に起こした事故は、補償対象外となります。
地震、噴火、津波によって生じた損害
地震、噴火、津波が原因で生じた損害は、保険会社が定める免責事項に該当します。そのため、対物賠償保険の補償対象外です。
自分の家の壁に衝突した
車庫入れの際にアクセルとブレーキを踏み間違え、自宅の壁や門、塀などに衝突して壊してしまった場合、対物賠償保険では補償されません。自動車事故の相手が自分自身である場合、対物賠償保険は使えないという点を覚えておきましょう。
なお、SBI損保では自動車保険に自宅・車庫等修理費用補償特約を付けていると、自宅や車庫に自動車をぶつけてしまった場合に修理代金が支払われます。
事故で家族の所有物を壊した
事故で家族の所有物を壊してしまった場合、修理費用などの損害は対物賠償保険の補償対象外となります。これは、自分自身だけでなく家族(父母、配偶者、子)が所有する財物も、損害賠償の対象にならないからです。
たとえば、家族の自転車に接触して壊した場合などは、補償されません。
対物賠償保険の保険金額
対物賠償保険は、契約時に保険金額を設定できます。設定可能な金額は保険会社によって異なりますが、SBI損保では「500万円」から「無制限」までの中で所定の金額を設定することができます。
なお、保険会社によっては、無制限のみの場合があります。
対物賠償保険の保険金額は無制限がおすすめ
物損事故は、一見軽微に見える場合でも、実際には非常に高額な損害賠償が発生する可能性があります。特に、自動車事故で店舗、車の積荷などに損害を与えてしまった場合は、1億円以上の損害賠償が発生することもあります。
このようなリスクに備えるためにも、対物賠償保険は無制限にしておくといいでしょう。
なお、過去には、下記のような高額な損害賠償金が発生した例があります。
高額な損害賠償金が発生した主な例
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| 認定総損害額 | 判決年 | 裁判所 | 被害物件 |
|---|---|---|---|
| 2億6,135万円 | 1994年 | 神戸地裁 | 積荷(呉服・洋服・毛皮) |
| 1億3,450万円 | 1996年 | 東京地裁 | 店舗(パチンコ店) |
| 1億2,036万円 | 1980年 | 福岡地裁 | 電車・線路・家屋 |
| 1億1,798万円 | 2011年 | 大阪地裁 | トレーラー |
| 1億1,347万円 | 1998年 | 千葉地裁 | 電車 |
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*損害保険料率算出機構「自動車保険の概況 2024年度」(2025年4月)を加工して作成
このようなリスクに備えるためにも、対物賠償保険の保険金額は無制限にすると安心です。
たとえば、SBI損保では、9割以上の契約者が無制限の補償を選んでいます(2023年7月〜2024年6月)。
対物賠償保険を使うと等級がダウンするので、注意が必要
対物賠償保険を使用すると、ノンフリート等級が3等級ダウンし、翌年以降の保険料が高くなります。
そのため、修理費用などの損害額が少額である場合には、保険を使わずに自己負担で対応したほうが、長期的には費用負担が少なくなるケースもあります。
もちろん、損害賠償額が高額の場合は、迷わず対物賠償保険を活用すべきですが、損害額が少ない物損事故であれば、等級ダウンによる影響を視野に入れて検討してください。
自動車保険の等級については、下記のページをご覧ください。
自動車保険の等級は下がるとどうなる?事故と等級の関係について解説
相手方とのトラブルを回避したい場合は、対物差額修理費用補償特約がおすすめ
対物賠償保険には、「対物差額修理費用補償特約」を付けることができます。
たとえば、自動車事故の相手方の車の年式が古いと、修理費用が時価額を大幅に上回ってしまうことがあります。この場合、時価額を超えた分の修理費用については、法律上の損害賠償責任がないため、対物賠償保険では時価額が保険金支払いの上限となります。ただ、相手に過失がない自動車事故では時価額を超えた分の修理代について加害者側に請求をされトラブルとなるケースがあります。
対物差額修理費用補償特約を付けていると、こうした場合に損害賠償の金額が時価額を超えても保険金が支払われます(ただし上限があります)。これにより、相手方とのトラブルを未然に防ぐ一助となります。
なお、対物差額修理費用補償特約は、保険会社によっては「対物超過特約」といった名称となっています。この特約の支払限度額は保険会社ごとに異なり、たとえばSBI損保では50万円を限度に補償します。
対物賠償保険の補償範囲を理解し、万が一の事故に備えよう
対物賠償保険は、自動車事故で相手方の物に損害を与え、法律上の損害賠償責任を負った場合に、修理費用などを補償する保険です。
対物賠償保険の保険金額は、高額な賠償に備えて無制限に設定すると安心です。一方で、ご自身やご家族の物への損害など、補償対象とならないケースがあるのも理解しておくことが大切です。対物賠償保険に関する正しい知識を身に付け、万が一の事態にしっかりと備えましょう。
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月払の場合は年間14,520円(①14,040円②480円)となります。 - ※22025年7月SBI損保調べ。各社の比較表はこちら
執筆年月日:2025年11月14日