自動車を安全に使用するには、点検整備をきちんと実施することが重要です。特に定期点検(法定点検)に関しては、ドライバー(車両の使用者)に対して法律で義務付けられています。
この記事では、定期点検と車検の違いをはじめ、実施する頻度、点検項目、費用についてわかりやすくまとめました。定期点検や日常点検に関する注意点も解説していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
定期点検はドライバー(使用者)の義務
定期点検は「法定点検」とも呼ばれており、自動車の安全性や性能を維持するために定期的に行う点検作業です。具体的には、下記の法律により点検が義務付けられています。
<道路運送車両法 第47条(使用者の点検及び整備の義務)>
自動車の使用者は、自動車の点検をし、及び必要に応じ整備をすることにより、当該自動車を保安基準に適合するように維持しなければならない。
*「道路運送車両法 第47条(使用者の点検及び整備の義務)」(e-Gov 法令検索)
(https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000185#Mp-Ch_4-At_47)
<道路運送車両法 第48条(定期点検整備)>
自動車(小型特殊自動車を除く)の使用者は、次の各号に掲げる自動車について、それぞれ当該各号に掲げる期間ごとに、点検の時期及び自動車の種別、用途等に応じ国土交通省令で定める技術上の基準により自動車を点検しなければならない。
一 自動車運送事業の用に供する自動車及び車両総重量八トン以上の自家用自動車その他の国土交通省令で定める自家用自動車 三月
二 道路運送法第七十八条第二号に規定する自家用有償旅客運送の用に供する自家用自動車(国土交通省令で定めるものを除く。)、同法第八十条第一項の許可を受けて業として有償で貸し渡す自家用自動車その他の国土交通省令で定める自家用自動車(前号に掲げる自家用自動車を除く。) 六月
三 前二号に掲げる自動車以外の自動車 一年
*「道路運送車両法 第48条(定期点検整備)」(e-Gov 法令検索)
(https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000185#Mp-Ch_4-At_48)
なお、自家用車については定期点検が義務付けられているものの、罰則や罰金に関する規定はありません。事業用車両に関しては、定期点検を怠った場合の罰則・罰金が定められています。
定期点検は車検とは異なる
車検(正式名称:自動車検査登録制度)とは、自動車が法律で定められた安全基準や環境基準に適合しているか確認することを目的として、一定期間ごとに国が実施する検査のことです。新車登録後3年、それ以降は2年ごとに車検を受けることが義務付けられています。
車検は、安全基準への適合に関する、必要最小限の確認にすぎません。ドライバー(車両の使用者)には日常的かつ定期的な点検整備を行うことが法律で義務付けられているため、たとえ車検に合格していても点検整備は省略できない点に注意が必要です。
一方で、定期点検(24か月点検)は車検と同じタイミングで実施されるケースが多いことから、両者は混同されがちです。そのため、定期点検を実施しない方もいるかもしれません。
しかし、前述のとおり、定期点検と車検は別のものであり、検査の目的や点検項目が異なっているので必ず両方とも実施するようにしましょう。
定期点検の車種別の頻度と点検項目数
定期点検の頻度と項目は、車の種類によって異なります。国土交通省が定めている、車の種類ごとの定期点検の時期および点検項目数は、下記のとおりです。
定期点検の概要
主な対象自動車 | 定期点検の時期 | 点検項目数 |
---|---|---|
マイカー (自家用乗用車、軽自動車) |
1年ごと | 29項目 |
2年ごと | 60項目 | |
中小型トラック(自家用) レンタカー(乗用車) |
6か月ごと | 24項目 |
12か月ごと | 86項目 | |
バス、トラック、タクシー(事業用) 大型トラック(自家用) レンタカー(乗用車以外) |
3か月ごと | 51項目 |
12か月ごと | 101項目 | |
被牽引自動車 | 3か月ごと | 23項目 |
12か月ごと | 36項目 | |
二輪自動車 | 1年ごと | 35項目 |
2年ごと | 54項目 |
*「安全な車社会のために」(国土交通省)
(https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha/tenkenseibi/tenken/t1/t1-2/)を加工して作成。
普通車や軽自動車(いわゆるマイカー)には、12か月、24か月ごとに点検が義務付けられています。点検項目数は12か月点検が29項目、24か月点検が60項目です。
定期点検はディーラーや整備工場、カー用品店、ガソリンスタンドなどで受けられます。費用は12か月点検が1万から2万円程度、24か月点検が2万から3万円程度です。
自動車の点検と車検のスケジュール
日常点検も義務付けられている
車の点検整備には、大きく分けて「定期点検」と「日常点検」の2種類があります。定期点検だけでなく、日常点検も法律で義務付けられています。
<道路運送車両法 第47条の2(日常点検整備)>
自動車の使用者は、自動車の走行距離、運行時の状態等から判断した適切な時期に、国土交通省令で定める技術上の基準により、灯火装置の点灯、制動装置の作動その他の日常的に点検すべき事項について、目視等により自動車を点検しなければならない。
*「道路運送車両法 第47条の2(日常点検整備)」(e-Gov 法令検索)
(https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000185#Mp-Ch_4-At_47)
日常点検が義務とされているのは、自動車の安全性や性能を日々確保し、事故や故障のリスクを未然に防ぐ必要があるからです。自動車ユーザーは日常的に車両の状態を確認し、異常がないことを確かめたうえで車を使用する必要があります。
なお、日常点検に必要とされているのは、下記の15項目です。
日常点検の15項目
点検項目 | 概要 |
---|---|
ブレーキ液の量 | リザーバータンク内の液量が規定の範囲(上限ラインと下限ラインとのあいだ)にあるか点検する。 |
冷却水の量 | リザーバータンク内の液量が規定の範囲(上限ラインと下限ラインとのあいだ)にあるか点検する。 |
エンジン・オイルの量 | エンジンに付いているオイル・レベルゲージを抜き取り、付着しているオイルを拭き取ってからゲージをいっぱいに差し込み、再度抜き取った際にオイルの量がオイル・レベルゲージにより示された範囲内にあるか点検する。 |
バッテリー液の量 | バッテリー液の量が規定の範囲(上限ラインと下限ラインとのあいだ)にあるかを、車両を揺らすなどして点検する。 |
ウインド・ウォッシャー液の量 | ウインド・ウォッシャー液の量が適当かを点検する。 |
ランプ類の点灯・点滅 | エンジンスイッチを入れ、ランプ類の点灯・点滅具合が不良でないか、レンズなどに汚れや損傷がないか点検する。 |
タイヤの亀裂や損傷の有無 | タイヤの亀裂や損傷の有無、タイヤに異物が付着したりかみ込んだりしていないかを入念に点検する。 |
タイヤの空気圧 | タイヤの接地部のたわみ具合を確認して、タイヤの空気圧が規定の範囲内であるかを点検する。 |
タイヤの溝の深さ | タイヤの溝の深さが十分であることを、接地面のスリップ・サイン(タイヤ側面の三角マークのある位置の接地面に現れる)を目印に点検する。 |
エンジンのかかり具合・異音 | エンジンがすみやかに始動しスムーズに回転するか、またエンジン始動時やアイドリング状態で、異音がないかを点検する。 |
ウインド・ウォッシャー液の 噴射状態 |
ウインド・ウォッシャー液を噴射させ、ワイパーの作動範囲に噴射されるかを点検する。 |
ワイパーの拭き取り能力 | ワイパーを作動させ、低速および高速の各作動が不良でないか、ウインド・ウォッシャー液がきれいに拭き取れるか点検する。 |
ブレーキの踏み残りしろと 効き具合 |
ブレーキ・ペダルをいっぱいに踏み込んだとき、床板との隙間(踏み残りしろ)や踏み応えが適当であるか点検する。 |
駐車ブレーキの引きしろ (踏みしろ) |
駐車ブレーキをいっぱいに引いた(踏んだ)とき、引きしろ(踏みしろ)が多すぎたり、少なすぎたりしないか点検する。 |
エンジンの低速・加速状態 | エンジンを暖機させた状態でアイドリング時の回転がスムーズに続くか、またエンジンを徐々に加速したとき、アクセル・ペダルに引っかかりがないか、スムーズに回転するかを走行するなどして点検する。 |
*「安全確保と環境保全はクルマの点検・整備から。」(国土交通省)
(https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha/tenkenseibi/images/t_checklist.pdf)を加工して作成。
エンジンブレーキと燃費の関係については、下記のページをご覧ください。
エンジンブレーキとは?燃費を向上させるフットブレーキとの使い分け方を解説!定期点検に関する注意点
定期点検については判断に迷いやすいポイントがいくつかあります。特に、下記の2点は十分に理解しておくことが重要です。
定期点検は期限が過ぎても受けられる
定期点検を受けるべき期限が過ぎてしまった場合でも、所定の点検を受けることは可能です。その際、特別な申請などは必要なく、ディーラーや整備工場、カー用品店などに車を持っていき、手続きをすれば定期点検を実施してくれます。
定期点検の時期が近づいてくると、車を購入したディーラーや販売店からはがきや電話などで連絡が入ります。この点については、車検も定期点検も同様です。定期点検のお知らせが届いたら、できるだけ早く点検の日時を決めて予約しておくことをおすすめします。
期限が過ぎても定期点検を受けられるとはいえ、車を安全に使用していくためにも、可能な限り期限内に点検を実施することが大切です。
定期点検を怠るとメーカー保証が受けられないリスクがある
普通車や軽自動車などの自家用車に関しては、定期点検を受けなかったとしても法律上は罰則や罰金を科されることはありません。ただし、メーカー保証については、定期点検を受けることを必須条件としている場合があるため、点検を怠ると必要な保証を受けられないおそれがあります。
たとえば、対象車両がメーカー保証の期間内であっても、定期点検を受けていないことが原因で無償での部品交換に応じてもらえないケースもあります。
定期点検で自動車の不調が見つかったら修理のほか、買い替えも視野に
定期点検は車両の使用者に義務付けられているため、忘れずに実施することが大切です。定期点検だけでなく、日常点検や車検についても法律で義務付けられており、車を安全に運転するには欠かせないプロセスといえます。所有している車の定期点検や車検のタイミングを今一度確認し、把握しておくことが大切です。
なお、車に何らかの異常を感じた場合や、長年乗り続けている車の場合は、重大な故障が発生する前に買い替えを検討するのも1つの考え方です。
故障の内容によっては、部品交換や整備に多額の費用が必要になることも想定されます。早めに乗り替えを検討しておくことで、結果的に車の維持費を抑えられるケースも少なくありません。
また、車を買い替えるタイミングは、自動車保険の見直しにも最適です。自動車保険は被保険車の年齢や事故歴、補償の範囲などさまざまな要因によって保険料が変動します。必要な補償を確保しつつ保険料を抑えられれば、車にかかるトータルコストを削減できる可能性があるでしょう。
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執筆年月日:2024年11月5日