がんにかかった今だから言えること 「がん」と「お金」と「がん保険」
がんにかかった今だから言えること 「がん」と「お金」と「がん保険」

がん保険とがん団信は、どう違う?どう選ぶ?

相談者

相談者:30代の会社員です。昨年結婚をして、現在マイホームの購入を検討中です。結婚直後に、共働きの妻と一緒に勤務先の団体保険で、死亡保障と医療保障を確保しましたが、がん保険はまだ早いと思って加入しませんでした。でも、住宅ローンを色々調べているうちに、がん団信付きのものを選んだ方が良いのかなと思い始めて・・・。がん保険とがん団信は、どう違うのでしょうか?どちらを選ぶのが正解ですか?

黒田FP:がん保険は、おもにがんの治療にかかる費用をまかなう給付金が受け取れるもの。一方、がん団信は、がん(悪性新生物)と診断されたときに支払うべき住宅ローン残高がゼロになるものです。家計への経済効果から見ると、前者は収入が増え、後者は支出が減ります。どちらを選べば正解というわけではなく、ニーズに応じて選択あるいは併用するのが良いでしょう。

「がん団信」とは

銀行で住宅ローンを借りてマイホームを購入する場合、債務者が死亡または高度障害に陥った際に返済が不要になる団体信用生命保険(以下、団信)に加入するのが一般的です。 しかし、通常の団信は、病気で働けなくなった場合の保障はありません。
そこで、2001年にカーディフ生命から、日本で初めて、がんと診断されたら住宅ローン残高がゼロになる「がん保障特約付き団体信用生命保険」(以下、がん団信)が発売・提供されました。

以来、いわゆる特定疾病等を保障する団信のバリエーションは増え続け、今や、がんだけでなく、脳卒中と急性心筋梗塞を加えた3大疾病型。高血圧症、慢性腎不全、慢性膵炎、肝硬変、糖尿病などの5つの重度慢性疾患を加えた8大疾病型。8大疾病に大動脈瘤および大動脈解離、上皮内新生物、皮膚の悪性黒色腫以外の皮膚がんを加えた11疾病型、さらには、精神障害等を除くすべての病気やケガを保障する全疾病保障型まで登場しています。

「がん団信」とは
「がん団信」とは

疾病保障の団信のしくみは?

疾病保障の団信のしくみは? 疾病保障の団信のしくみは?

これらの疾病を保障する団信は、いずれも所定の状態を満たすと住宅ローンの残高がゼロになるのですが、疾病やタイプによって条件が異なります。

  • がん保障型
    • がん(悪性新生物)と診断された場合に住宅ローンの残高がゼロになる。
  • 3大疾病型・8大疾病型
    • がんは、がん(悪性新生物)と診断された場合に住宅ローンの残高がゼロになる。
    • 脳卒中・急性心筋梗塞は、診断されて手術を受けたり、60日以上所定の状態が継続した場合に住宅ローンの残高がゼロになる。
    • それ以外の疾病は、罹患して就業不能状態になると12ヵ月間、月々のローン返済が免除され、さらにそれが12ヵ月以上継続した場合に、それぞれ住宅ローン残高がゼロになる。
  • 11疾病型
    • がんは①②と同じ。
    • それ以外の10疾病は、治療目的の入院を180日継続した場合に住宅ローンの残高がゼロになる。
  • 全疾病型
    • 対象となるいずれの疾病も就業不能状態が続いた場合、月々のローン返済が最長12ヵ月間免除され、働けないまま12ヵ月が経過した時点で、住宅ローン残高がゼロになる。

このように、タイプごとに条件が異なりますし、疾病によって保障が2段階になっている場合もあり、どのようなケースで保障が受けられるのか、正しく理解する必要があります。

「がん団信」でがんに備えるメリットは?

「がん団信」でがんに備えるメリットは? 「がん団信」でがんに備えるメリットは?

では、がんのみを保障するがん団信とがん保険と比較してみましょう。
まずは、がん団信でがんに備える場合、割安な保険料で高額な保障が得られる点が最大のメリットです。

具体的に試算してみます。ご相談者が35歳だと仮定して、以下のA銀行のがん団信付きの住宅ローンを組んだ場合、金利が年0.2%上乗せすることになり、平均月額負担額は1,978円。35年間の負担総額は83万760円です。
一方、がん保険について、以下のB保険会社のがん保険に加入した場合の保険料は月額8,734円。保障期間は終身ですが、35年間の保険料は366万8,280円となります。
単純に比較ができないとしても、保険料だけみると、がん団信に軍配が上がりそうです。

受けられる保障はどうでしょうか?
がん団信の場合、もし住宅ローン返済開始後、90日間の免責期間を過ぎてから、がん(悪性新生物)と診断されれば、ほぼ借入金額2,000万円と同じ額程度の住宅ローンの返済が不要になります。
もちろん、年々、住宅ローン残高は減少していきますので、受けられる恩恵も減っていきますが、住宅ローン残高は60歳時点で約680万円、65歳時点で約354万円です。
一方、がん保険の場合は、がんと診断された時点で300万円が受け取れ、2年目以降も、回数無制限で同額が受け取れるものの、新たにがんと診断されたとき、あるいは、再発・転移が見つかったりしたときや治療のための入院や通院をしたりしたとき等の条件を満たさねばなりません。

<A銀行・がん団信付き住宅ローンの前提条件>

借入金額2,000万円(ボーナス返済なし)
借入期間35年、金利年率1.5%
返済方法:元利均等返済
金利上乗せ分:月額1,978円

<B保険会社のがん保険>

保障内容:がん診断給付金(*):300万円(1年に1回を限度 回数無制限)
保険期間・保険料払込期間:終身
保険料:月額8,734円
支給条件
初回…初めてがんと診断確定されたとき
2回目以降…前回の支払事由該当日から1年経過後に、以下のいずれかに該当したとき

「がん団信」でがんに備える留意点は?

続いて、がん団信でがんに備える場合のデメリットをみてみましょう。
おもに次のようなものが挙げられます。

  • 住宅ローンを組んで住宅を購入する人しか利用できない
    現金でマイホームを購入する人の場合、団信に加入する必要はありません。がんのリスクに備えるのであれば、がん保険が選択肢の一つとなります。ご相談者の場合、住宅ローンの名義が自分のみであれば、奥さまのがん保障は同じくがん保険で備えます。
  • 途中で付加や契約変更ができない
    原則として、がん団信に加入する場合、住宅ローンを組む際に付帯します。途中で付帯することや保障内容を見直すなど、契約の変更などの見直しはできません。そのため、既契約の保険と保障内容が重複する可能性もあります。
  • 住宅ローン返済が終了すれば保障もなくなる
    現金でマイホームを購入する人の場合、団信に加入する必要はありません。がんのリスクに備えるのであれば、がん保険が選択肢の一つとなります。ご相談者の場合、住宅ローンの名義が自分のみであれば、奥さまのがん保障は同じくがん保険で備えます。
  • 健康状態によって加入できない場合もある
    がん団信も保険ですので、健康状態を告知する義務があり、加入できないことも考えられます。なお、加入条件が一般団信よりも緩和されたワイド団信もありますが、死亡・高度障害状態のみの保障です。
  • 通常よりも金利が高くなる
    疾病を保障する分の金利の上乗せがない商品もありますが、通常は金利が高くなり、住宅ローンの返済負担は増えます。また、がん保障部分が金利に含まれているタイプの場合、がん保障が不要になっても、完済まで上乗せ分の金利を負担し続けなければなりません。
  • 給付金(お金)が受け取れるわけではない
    がん団信の経済的効果は、「住宅ローン残高がゼロになる=支出が減る」という点です。それに対して、がん保険は、「一定の給付金が受け取れる=収入が増える」わけですから、医療費などをまかなうこともできます。また、さまざまなニーズに応じて保障を組み合わせることも可能です。ただし、最近は、住宅ローン残高への保障だけでなく、がん診断給付金やがん先進医療、入院一時金など、手厚い保障が受けられる商品もあります。
  • 3ヵ月以内に診断された悪性新生物や上皮内がんは対象にならない
    がん保険と同じく、がん団信にも免責期間があり、責任開始日からその日を含めて90日以内に悪性新生物と診断確定された場合は対象外です。また、上皮内がんや非浸潤がん、大腸の粘膜内がんおよび皮膚の悪性黒色腫以外の皮膚がんも別途特約を付帯しない限り、保障の対象とはなりません。

「がん団信」と「がん保険」どちらを選ぶべき?

このように、がん団信にもメリットとデメリットの両方があり、一概に「こちらを選んだ方が良い」という正解はありません。
考え方としては、高額な住宅ローンを組んでおり、がんと診断された場合、残債がなくなるほどの大きな保障が欲しい人、働き盛りの時期にがんによる収入減少リスクに備えたい人は、がん団信に加入するメリットは大きいでしょう。

一方で、がんに罹患したときにまとまった給付金を受け取りたい人、治療が長引いたり、さまざまながん治療を受けた場合の治療費に備えたい人、住宅ローン完済後もがん保障が欲しい人などは、がん保険の方を選ぶか、がん団信に上乗せして備えておくことをお勧めします。

いずれにせよ、保険は必要な時期に必要な分だけかけるのが鉄則ですが、それが住宅ローン返済の時期や保障額と合致するかどうかは難しいところです。
疾病保障の団信の多様化で、がん保障の選択肢の幅が広がったことは確実とはいえ、住宅ローンも保険も、それぞれ個々の状況によって、自分のニーズにあったものを選ぶことが重要だということに変わりはありません。

執筆監修 黒田 尚子(くろだ なおこ)

執筆監修 黒田 尚子(くろだ なおこ)

CFPR 1級ファイナンシャルプランニング技能士
CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター
消費生活専門相談資格、第2種情報処理技術者資格
初級システムアドミニストレータ員資格

富山県出身。立命館大学法学部修了後、1992年(株)日本総合研究所に入社、SEとしてシステム開発に携わる。在職中に、自己啓発の目的でFP資格を取得後に同社退社。1998年、独立系FPとして転身を図る。現在は、セミナー・FP講座等の講師、書籍や雑誌・Webサイト上での執筆、個人相談を中心に幅広く行う。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験をもとに、がんをはじめとした病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力している。

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