がんの原因

がん細胞は、正常な細胞の遺伝子に複数の傷がつくことにより発生します。そして、傷がついた細胞は増殖し、そこに異常が起こるとさらに増殖します。今回は、どのような要因で正常な細胞の遺伝子に傷がつくのか、がんの原因について解説します。

がんの原因

がんの原因にはどんなものがある?

がんの原因は特定しづらいものの、一般的にがんの原因として「確実」とされているものは、タバコ(喫煙)、食生活、持続感染(ウイルスや、ピロリ菌をはじめとする細菌)などです。遺伝(がんの家族歴)や環境ががんの原因となることもあります。

タバコはがんの主要な原因

タバコはがんの主要な原因

「タバコは身体に悪い。がんの原因になる」と思っている人は多いのではないでしょうか。実際、国際がん研究機構(IARC)の「たばこ喫煙のヒト発がん性評価に関する報告書」では、喫煙は、実に16ものがんに対して発がん性があると指摘しています。また、国立がん研究センター「がん情報サービス」によると、男性のがんの約3割はタバコが原因と考えられています。受動喫煙も肺がんを始めとするがんの原因になることがわかっており、「タバコはがんの大きなリスク要因」といえるでしょう。

食生活やストレスもがんの原因

食生活やストレスも、がんとの関連性が高いといわれています。
国立がん研究センターの「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」では、野菜不足や果物不足は食道がんや胃がんのリスク要因に関連付けられるとしています。また、塩分の過剰摂取は胃がんのリスク要因に、過体重と肥満は結腸がん、すい臓がんなど6つのがんのリスク要因に、それぞれ関連付けられるとしています。

食生活やストレスもがんの原因

ストレスは目に見えないため、がんとの関連性の実証は難しいですが、一般的に、自覚的なストレスレベルが高いほど、がんのリスクが高まるといわれています。

遺伝はがんに影響する?

家族・親族にがんにかかったことがある人がいると、自分もがんになるのではないか、と「がんの遺伝」を心配する人も多いでしょう。しかしながら、さほど神経質になる必要はありません。国立がん研究センター「がん情報サービス」によると、がんの遺伝、いわゆる「遺伝性腫瘍」は、確かに大腸がん、乳がん、卵巣がん、骨軟部肉腫、皮膚がんなどにおいて見られますが、全体に占める割合は非常に低くなっています。また遺伝性のがんは遺伝子検査で調べることもできます。がんと遺伝については、現在では解明されていないことも多いですが、極端な心配は不要といえるでしょう。

がんと遺伝 〜原因・遺伝子検査・治療・予防について〜
がんと遺伝 〜原因・遺伝子検査・治療・予防について〜

家族や親せきでがんにかかった人がいる場合、もしや自分もいずれ・・・?と不安になる方も多いと思います。実は遺伝性のがんの割合は少なく、特徴がある上、遺伝子検査で調べられるのです。ここでは、がんが遺伝する確率や遺伝子検査・治療、予防について解説します。

がんの部位によって原因も異なる

がんの部位によって原因も異なる

がんといってもさまざまですので、部位によって考えられる原因もそれぞれ異なります。主ながんについて見てみましょう。

  • 胃がん・・・食塩の過剰摂取や喫煙、ピロリ菌などが主なリスク要因です。ストレスにより罹患することもあります。
  • 大腸がん・・・生活習慣(肥満、飲酒など)が結腸がん、食生活(赤肉、加工肉)や喫煙が大腸がんの主なリスク要因です。
  • 肝臓がん・・・多くは肝炎ウイルスの持続感染によるものです。その他に、喫煙、アフラトキシン(食事に混入するカビ毒)、飲酒などが主なリスク要因です。
  • 膵臓がん・・・発生率が低かったことから研究が進んでおらず、残念ながら、はっきりとした原因がわかっていません。ただし、喫煙と肥満は膵臓がんのリスク要因になります。
  • 卵巣がん・・・細胞分類が多様なことから、単一の要因は存在せず、複数の要因が関与しています。遺伝、出産歴がないこと、成人期の高身長などがリスク要因として挙げられます。

がんを予防するには

誰しも「がんを予防したい。がんにかかりたくない」と思うでしょう。それでは、がんを予防するにはどうすればよいのでしょうか。国立がん研究センター「がん情報サービス」の「科学的根拠に基づくがん予防」は、「次の5つの健康習慣を実践することによって、がんになるリスクが低下(ほぼ半減)する」と指摘しています。

がんを予防するには
  • 禁煙する
  • 食生活を見直す
  • 適正体重を維持する
  • 身体を動かす
  • 節酒する

これらの健康習慣を実践することで、がんにかかる可能性を抑えることができます。たとえば、がんになる原因のうち喫煙が占める割合は大きいため、禁煙してしまえばリスクを大きく低下させることができます。しかしながら、生活習慣を変えることはなかなか難しいものです。加えて、もしこれら5つの健康習慣を完全に実践できても、残念ながら、がんになるリスクをゼロにすることはできません。

がんに備えるには

がんに備えるには

がんの定期検診や、身体の異常に気づいたらすぐに医療機関を受診することでがんの早期発見は可能ですが、ここまで見てきたように、がんを完全に予防することはできません。裏返せば、どのような人でもがんにかかってしまう可能性があるということです。そのため、「もしも」のときの治療に備える必要があります。それには、がん保険への加入が最も有効です。がん保険は、一度がんにかかってしまうと、加入することができない場合が多いです。がんが心配な人は、早めにがん保険に加入しておくことをお勧めします。

執筆年月:2018年2月

執筆:一色 徹太(いっしき てつた)

執筆:一色 徹太(いっしき てつた)

日本生命でのファンドマネージャーや法人営業の経験をいかし、22年間の勤務後、独立系FPに転身。現在、一色FPオフィス代表として、個人相談や執筆、講演に従事。東証(東京証券取引所)で個人投資家向けデリバティブ講座も持つ。生命保険をはじめ、DC(確定拠出年金)、債券、ETF、デリバティブ、企業年金に特に精通。

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