がん早期発見のために知っておくべき初期症状について

がんの症状は、がんの罹患部位によって異なります。症状を見逃してしまい、ほかの部位に転移してしまうと、がんの治療が長引いてしまったり、大事に至ってしまったりすることも十分に考えられます。今回は主ながんの部位ごとに、症状について解説します。

がん早期発見のために知っておくべき初期症状について

食道がんの症状

年齢によってなりやすいがんは違う

食道がんの初期症状はほとんど自覚されることがなく、健康診断や人間ドックのときに見つかることが多いとされています。

食道がんは、進行するにつれて徐々に本人が自覚できる症状が現れます。症状として挙げられるのは、胸や背中の痛み、体重の減少、咳、声のかすれなどです。また、がんが大きくなることで食道の内側が狭くなり、飲食物がつっかえるように感じることもあります。

胃がんの症状

胃がんは、進行が緩やかな「分化型」と、がん細胞の増殖が非常に急速な「未分化型」に分けられます。代表的な症状には、胃の痛みや食欲低下、吐き気などがありますが、がんのタイプによって症状の現れ方が異なります。分化型の場合は、進行が緩やかなため、症状が現れるのに時間がかかり、未分化型は急速に進行するため比較的早く自覚症状が現れます。

胃がんの症状

胃がんは40代以降で発症しやすく、人口10万人のうち何人が発症したかを表す罹患率は、男性146.7、女性62.8とのデータがあります。また、5年生存率は、早期がんでは90%以上、リンパ節や他臓器に転移しているような進行がんでは10%未満と大きく差が開いています。早期発見・早期治療が重要ながんとなっています。

初期症状

胃がんの場合、初期にはほとんど症状がありません。胃の痛みや食欲低下などの症状が現れるころには、すでに進行がんになっている可能性があります。中には、胃の不快感や胸焼けが、初期症状として現れることがありますが、初期の胃がんは、健康診断で偶然発見されることが多いのが現状です。

症状が進むと

胃がんが進行すると、がんから出血が生じて貧血や黒色便などが現れ、胃に痛みを感じるようになります。また、食べ物の通過性が悪くなるため、慢性的な吐き気や食欲不振などが生じます。他臓器に転移しているような末期がんの場合、5年生存率は7%と言われています。

肺がんの症状

肺がんの症状

肺がんの場合、初期段階ではほとんど症状がありません。早期がんが発見される契機として最も多いのが健康診断です。

がんが進行すると、がん細胞によって肺の構造が破壊され、咳や痰、呼吸困難、発熱などの症状が現れます。

感染症にかかりやすくなって肺炎が生じることも多く、進行すると肺周辺の神経に侵食して前胸部痛が生じたり、物が飲み込みにくくなったりします。

60代以降の男性がなりやすいがんですが、罹患率は、男性122.3、女性55.2とのデータがあります。また、5年生存率は早期がんでは70%、進行がんでは20%未満で、高齢になるにしたがって生存率が低くなります。

初期症状

肺がんの場合、初期症状は見られないことがほとんどです。しかし、がんができる場所によっては、初期のころから咳や痰など、一般的な呼吸器症状が現れることもあります。

症状が進むと

肺がんが進むと、咳や痰などの呼吸器症状のほかに呼吸困難や血痰などが現れ、胸の中や近くの神経に浸潤し、声のかすれや嚥下困難、胸痛が見られることがあります。末期では脳に転移しやすく、さまざまな神経症状が現れ、5年生存率は5%程度となります。

前立腺がんの症状

前立腺がんの場合、初期段階で症状が見られることは、まずありません。進行が非常に緩やかながんであり、発症したとしても自覚症状が特になく、そのまま一生を終える方が大勢いるとされています。しかし、進行してがんが大きくなると、尿閉や残尿感、頻尿、血尿などの排尿の症状が見られ、骨に転移して骨折の原因となることもあります。

前立腺がんの症状

50歳ごろから徐々に罹患率が上昇し、高齢になるにつれて高くなる傾向にあります。また、罹患率は120.9とのデータがあり、男性のがんの中で4番目に多いがんとなっています。前立腺がんの5年生存率は早期がんではほぼ100%、転移が生じているような進行がんでも60%以上といわれています。

初期症状

前立腺がんには、初期症状がほとんどありません。しかし、広く健診で行われるようになったPSA検査の際、偶然発見されることがあります。

症状が進むと

がんが進行して大きくなると、前立腺の近くにある膀胱を物理的に圧迫して、尿が出にくくなったり、残尿感や頻尿などが生じたりします。また、腰椎や骨盤などの骨に転移しやすく、強い痛みが生じることもあります。これが前立腺がん発見のきっかけとなることもあります。

直腸がんの症状

直腸がんの症状

直腸は、便が排出直前に溜められる臓器のため、一般的にほかのがんよりも症状が出やすいのが特徴です。一般的な症状としては、がんからの出血が便に混じるために血便が生じ、便が細くなるなどの形状の変化、残便感が生じます。進行すると腹痛や体重減少、腸閉塞などの合併症も起こり、末期になると肝臓や肺に転移します。

40代から罹患が増え始め、高齢になるに従って罹患率があがります。男性の罹患率が45.3である一方、女性は23.9であり、男性のほうが発症しやすいがんです。5年生存率は早期がんでは98%ですが、転移があるような進行がんでは20%未満と大きな差があります。

初期症状

直腸がんは、初期の段階から血便を生じやすいため比較的見つかりやすいがんといわれています。しかし、腹痛や体重減少などその他症状は、進行してからでないと現れにくく、痔による出血と考えられてせっかくの初期サインが放置されてしまう場合も多々あります。

症状が進むと

がんが進行して大きくなると、がんからの出血が増えるために貧血が見られたり、直腸のとおりや機能が障害されて便が細くなったり、残便感、腹痛を感じたりすることがあります。また、末期がんでは肺や肝臓に転移しやすく、転移がんが発見のきっかけとなることも稀ではありません。これらの転移を生じた場合には、生存率が著しく低くなります。

肝臓がんの症状

肝臓は古くから「沈黙の臓器」と呼ばれており、病気があったとしても、極めて重症にならなければ、症状が現れにくいのが特徴です。肝臓がんも例外ではなく、初期のころにはほとんど症状がありません。そのため、進行がんになって初めて黄疸や腹痛が自覚され、そのころには標準的な体型の方では、体表面からがんが固まりとして現れ、皮膚の上から確認できることもあります。

肝臓がんの症状

50歳頃から罹患率が上昇し、男性では44.2、女性では20.8とのデータがあります。5年生存率は早期がんであれば98%ですが、転移がある進行がんでは20%で、10年生存率は5%未満といわれています。

初期症状

肝臓がんの場合、初期症状はほとんどありませんが、稀に胆管周囲にがんができると初期のころから黄疸が見られることがあります。発見のきっかけはほかのがんと同様に、健康診断での血液検査やエコー検査であることが多いです。

症状が進むと

がんが肝臓内で大きくなると、倦怠感や発熱、腹水、血管の大きな膨張などが生じます。また、胆管が閉塞されることで黄疸が見られるのも特徴です。このころには肺や脳へ転移していることが多く、適切な治療を行ったとしても生存率は大幅に低下します。

まとめ

がんは種類によって症状の現れ方が異なります。しかし、すべてのがんに共通しているのは、早期がんであれば、適切な治療によって高い生存率が望めるということです。そのためにも、がんは早期発見が重要です。がん検診は、進んで受けるようにしましょう。

執筆年月:2018年6月

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執筆:医師・成田亜希子

執筆:医師 成田 亜希子

国立大学医学部を卒業後、一般内科医として勤務。育児の傍ら、公衆衛生分野にも従事し、国立医療科学院での研修を積む。感染症や医療問題にも精通している。

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