がんの治療方法〜手術・抗がん剤・放射線・免疫療法・緩和ケアについて〜

がんの治療法には大きく分けて「局所療法」と「全身療法」の2種類があります。
局所療法はがんの発生部位が限られている場合に、全身療法は発生部位が複数もしくは全身に広がっている場合に選択されるものです。 局所療法には手術療法(外科治療・レーザー療法等)、放射線療法があり、全身療法には抗がん剤などの化学療法、免疫療法があります。また、がん細胞に直接治療を行うものではありませんが、病気にともなう心身の苦痛を和らげる緩和ケアがあります。 各治療法の特徴をみていきましょう。

がんと遺伝 〜原因・遺伝子検査・治療・予防について〜

手術療法

<特徴>
最も基本的な治療法で、がんの病巣やその周りの正常な細胞を、目に見えないがんの取り残しが無いように切除する局所療法です。

<対象>
早期のがんだけでなく、進行がんでも手術で切除できるものであれば治療の対象となります。手術療法では、リスクを計算したうえで、手術療法が最も有効であるかどうかが、施術が妥当であると判断するポイントになります。

<費用>
手術療法の費用は、手術方法や部位によって大きな差があります。たとえば、胃がんであれば、保険適用前で30万円から100万円を超えて高額になることもあります。

<費用>

<メリット・デメリットと対処法>
目に見えない小さながんが残っていなければ、完治が見込めるのが手術療法の大きなメリットです。デメリットとしては体にメスを入れて切除するために傷の治癒に時間がかかる点が挙げられます。切除した部位や手術の内容によっては、体の機能の一部が失われる場合もあります。そこで、最近は切除の範囲が狭いなど体へのダメージを抑える縮小手術、内視鏡と細い手術器具を使って小さな穴から施術する腹腔鏡下手術や胸腔鏡下手術のほかに、がんの種類によってはロボット支援手術などを行うことで体へのダメージを少なくする取り組みがなされています。

<副作用など>
手術によって傷がつくことに対して体が反応した結果、臓器機能の低下などが起こる可能性があります。

化学療法

<特徴>
薬物療法の一つで、抗がん剤の投与によってがん細胞の増殖を妨げ、攻撃するため、全身に転移してしまったがん細胞に効果がある全身療法です。抗がん剤は現在100種類以上あり、投与方法は点滴などの注射と経口の2種類があります。化学療法はがんを縮小させるために手術療法前に行われることもあれば、再発を予防するために手術療法後に行われる場合もあります。 また、乳がんや前立腺がんなどホルモンがかかわっているがんに対しては、同じく薬物療法のホルモン療法によって治療が行われる場合もあります。

<対象>
主に全身に転移(増殖・拡大)している可能性のあるがんや手術療法が妥当な選択とならないがんに対しての治療法です。

<費用>
化学療法は、中長期的なサイクルで行われるのが一般的です。特に国内未承認の抗がん剤は保険適用外となるため、1ヵ月で100万円以上と高額になることも珍しくありません。

<費用>

<メリット・デメリットと対処法>
全身に対して効果があるので、手術療法の対象でないがんの治療もできるのが化学療法のメリットです。デメリットは個人差があるものの副作用が起こりやすい点です。これは抗がん剤ががん細胞のみでなく、正常な細胞も攻撃してしまうためですが、最近では分子標的治療薬という特定のがん細胞をターゲットにして作用する薬も使用されてきており、副作用を改善する効果が期待できます。

<副作用など>
副作用は使用する抗がん剤によって異なりますが、代表的なものは、脱毛、吐き気、食欲不振、倦怠感、しびれ、感染症リスクの増加、貧血、口腔粘膜の炎症などです。これらの副作用に対しては症状をやわらげる対症療法が行われています。

抗がん剤が効かない場合とは

全身治療である抗がん剤投与は病巣だけに集中的に作用するわけではなく、また、長期間の使用によりがん細胞が薬剤への耐性を獲得する場合もあり、徐々に効かなくなることもあります。また、薬剤感受性といって、もともと抗がん剤が効きにくいがんが存在します。

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放射線療法

<特徴>
放射線を照射してがんの病巣を攻撃する局所療法です。 放射線療法は大きく分けて、体の外側から高エネルギーの放射線を照射する「外部照射」と、薬の投与や針の埋め込みなどによって体内に弱めの放射性物質を取り入れて照射する「内部照射」があります。よく使用されるのは、レントゲンなどでも使用されるX線ですが、ほかのタイプの放射線の実用化も進んでいます。

<対象>
手術療法以外で根治を目指すがんが対象です。また、再発の予防やがんによる症状の緩和のために用いられることもあります。

<費用>
方法によっても異なりますが、一般的には1回1万円から2万円程度で、30回の照射を行う場合、保険適用前で合計30万円から60万円程度です。しかし、先進医療の重粒子線治療や陽子線治療を選択すると、全額自己負担となり300万円ほどかかるといわれています。

<費用>

<メリット・デメリットと対処法>
外来治療が可能で、多くは入院しなくてもよいので治療費以外の出費が抑えられたり、仕事をしながらでも治療を行えたりすることが放射線療法のメリットです。デメリットは被爆するということです。内部照射の場合は患者自身から放射線が放出されるために、ほかの人が放射線を浴びないように、特別室に入るなど行動の制限が必要となります。

<副作用など>
副作用には治療中・直後に起こるものと、治療後半年から数年経って現れるものがあります。照射部分の皮膚がやけどや炎症を起こしたり、疲労感や吐き気、食欲の低下がおきたりするのが主な症状です。また、照射部位の臓器に障害がでることもあります。 これらに対しては症状をやわらげる対症療法がとられているのが一般的です。

免疫療法

<特徴>
患者さん本人の細胞を利用して行われる全身療法で、「手術療法」「化学療法」「放射線療法」の三大療法に次ぐ、第四の治療法と呼ばれています。免疫療法には歴史があり、体の免疫全体を底上げすることでがんに対抗するものから、がんに特化した免疫細胞に作用するものへと発展しました。

がん免疫療法の技術革命

<対象>
どの進行度合いのがんにも用いられており、幅広いがんを対象とします。

<費用>
多くは保険外診療のため全額自己負担となります。1回20万から30万円程度で、6回で1サイクルとすることが珍しくありません。

<メリット・デメリットと対処法>
ほかの治療法と比べて、副作用が極めて少なく、患者さんの体への負担が軽いのが免疫療法のメリットです。デメリットは効果が科学的に証明されるだけのデータの蓄積が少ない治療法であること、保険外診療であるため自己負担が高額であること、タイミングによっては抗がん剤治療の効果を下げてしまう可能性があることが挙げられます。免疫療法を選択する場合は、医師とよく相談し、納得した上で治療を開始することが大切です。

<費用>

<副作用など>
副作用は極めて少なく、副作用が出ても重篤な症状になることはほとんどありません。

オプジーボ(一般名:ニボルマブ)

オプジーボとは、免疫チェックポイント阻害薬とも呼ばれる新しいタイプのがん治療薬です。一般にがん細胞は免疫細胞から攻撃を受けないための物質をだしますが、オプジーボはこれを防ぎます。患者さん自身の、がんを攻撃する免疫機能を高める薬剤として効果が期待され、2014年7月に悪性黒色腫、2015年12月に肺がん、2016年8月に腎細胞がんへの利用が承認されました。

緩和ケア

<特徴>
緩和ケアとは病気に伴う心身の苦痛を和らげる治療のことです。治療(cure)とケア(care)では、狭義においては別のものです。しかし、患者さんやその家族が自分らしさを保ちながら過ごせるよう、医学的な側面に限定せず「がん治療の早期から開始すべき積極的な医療」(WHOの提唱)であることから、治療の一環であると言えるでしょう。

<対象>
過去においては終末期にある患者さんが対象であるという考えでしたが、現在はがんと診断された時点から、すべての患者さんおよびその家族が対象となります。緩和ケアは、入院・外来・在宅といった状況の違いを問わずに行われるべきものですが、より専門的なケアを求める場合は、緩和ケアチームを有する指定の病院で受けることが可能です。

<費用>
厚生労働省から認可を受けた病院で、緩和ケアチームが主治医とともにケアにあたる場合、医療費に「緩和ケア診療加算」が追加され、この合計額に医療保険が適用されます。入院中に一般病棟で緩和ケアを受ける場合、「緩和ケア診療加算」は保険適用前で1日400点(4,000円)となります。

<メリット・デメリットと対処法>
がんによる強い痛みを取り除くことで、QOL(Quality Of Life : 生活の質)の維持ができることが緩和ケアのメリットです。痛みのほかにも、吐き気やだるさ、精神的な落ち込み、経済的な不安、恐怖などに対して、さまざまな職種のメンバーがチームとなってサポートしてくれます。 治療としてのデメリットは特にありませんが、「緩和ケア=終末医療」といった否定的なイメージが根強くあるため、身体的、精神的、社会的な苦痛をやわらげる一般的な医療であることを周知徹底する医療体制側の社会的努力が必要です。

がん治療においては、主治医の説明を理解し、納得して治療を進めるだけでなく、必要に応じて緩和ケアを活用することは、大切だといえるでしょう。

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執筆:江波 明子(えなみ あきこ)

執筆:江波 明子(えなみ あきこ)

国立大学看護学部卒業後、都内の国立病院、私立病院で看護師として従事。消化器外科、乳腺外科、呼吸器内科病棟で多くのがん患者さんとかかわってきました。現在は、育児をしながら医療や健康の専門記事ライターとして活動中。皆さまに分かりやすい情報をお届けします。

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