女性のがん保険の選び方・必要性について

がんには女性特有のものがあり、女性と男性ではがんにかかりやすい年代や部位が異なっています。近ごろは女性用のがん保険も出てきているため、女性の場合は、男性と比べより多い種類の中からがん保険を選ぶ必要があります。今回は、女性ならではの視点から、がん保険の選び方や必要性について解説します。

女性のがん保険の選び方・必要性について

女性特有のがんとは

女性特有のがんには、乳がん(※)、子宮頸がん、卵巣がんなどがあります。これらのがんの特徴は、年齢が若くても、普通のがんより罹患リスクが高いことです。そのため、30代から50代前半では、男性よりも女性のほうががんの罹患率が高くなっています。女性特有のがんについて、もう少し詳しく見てみましょう。

  • 乳がんは男性でも罹患する可能性があります。

乳がん

乳がんは乳腺の組織にできるがんで、多くは乳管から発生しますが、一部は乳腺小葉から発生します。がん統計(※)によると、2019年に乳がんと診断されたのは97,812例(男性670例、女性97,142例)であり、女性の9人に1人が乳がんに罹患しています。

乳がんの主な症状は、乳房のしこりです。ほかには、乳房にえくぼやただれができる、左右の乳房の形が非対照になる、乳頭から分泌物が出る、などがあります。
乳がんの検査では、最初に、目で見て確認する視診と、触って確認する触診、マンモグラフィ、超音波(エコー)検査を行います。乳がんの可能性がある場合には、病変の細胞や組織を顕微鏡で調べて診断を確定します。
がんの広がり方や転移を調べるためには、CT検査、MRI検査、骨シンチグラフィ、PET検査などの画像検査を行います。

乳がんの治療法には、主に手術、放射線治療、薬物療法があり、手術によってがんを取りきることが基本となります。手術後の病理検査によって、術後の治療計画を検討します。がんの状態によっては、術前薬物療法(手術の前に行う薬物療法)を行うこともあります。

  • 出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)
    (https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html)
乳がんの症状と特徴・原因となる要素とは
乳がんの症状と特徴・原因となる要素とは

乳がんは女性の9人に1人がかかります。超音波検診で何度も同じところを見られて、不安になった経験がある人もいるのでは?しかも、初期はしこりや赤み、痛みなどの自覚症状がないことも。早期発見・治療のために、リスクをあげる要素や自己触診をご紹介します。

子宮頸がん

子宮頸がんとは、子宮頸部にできるがんのことです。大部分の子宮頸がんは、CIN(子宮頸部上皮内腫瘍)やAIS(上皮内腺がん)という、がんになる前の状態を経てからがんになります。がん統計(※)によると、2019年に子宮頸がんと診断されたのは10,879例です。30代から40代にかけて罹患のピークとなっています。
がんになる前の状態であるCINやAISの時期には症状がなく、おりものや出血、痛みもありません。子宮頸がんが進行すると、月経中でないときや性交時の出血、においを伴う濃い茶色や膿うみのようなおりもの、水っぽいおりものや粘液がたくさん出るなどの症状がみられることがあります。

子宮頸がんの検査では、通常まず子宮頸部の細胞診を行います。その結果によっては、子宮頸がんの発生する危険性が高い種類のヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papillomavirus)の感染を検査するハイリスクHPV検査を行うこともあります。CINやAIS、がんなどの疑いがある場合には、コルポスコープ(腟ちつ拡大鏡)下の組織診を行います。

子宮頸がんの治療には、手術(外科治療)、放射線治療、薬物療法、緩和ケアがあります。

  • 出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)
    (https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html)
子宮頸がんの症状と罹患の可能性…おりもの異変や不正出血は婦人科へ
子宮頸がんの症状と罹患の可能性…おりもの異変や不正出血は婦人科へ

不正出血やおりものに臭いがあると、もしや子宮頸がん!?と不安になる方も多いと思います。初期症状、進行した場合に現れる症状やステージ(病期)から、子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)について、治療法や検診まで詳しく解説します。

卵巣がん

卵巣がんは卵巣に発生する悪性腫瘍です。
がん統計(※)によると、2019年に卵巣がんと診断されたのは13,388例です。40歳代から増加し、50歳代から60歳代がピークです。

がんが初期の段階ではほとんど自覚症状がありません。服のウエストがきつくなる、下腹部にしこりが触れる、食欲がなくなったなどの症状をきっかけに受診し、卵巣がんであることがわかる場合もあります。
卵巣がんが疑われた場合には、腹部の触診や内診のほか、超音波(エコー)検査やCT検査、MRI検査などの画像検査を行います。がんかどうかについて正確な診断をするためには、病変の一部をとって行う病理診断(組織診断・細胞診断)が必要です。しかし、卵巣は骨盤内の深いところにあることから、腹部の皮膚から針を刺して組織や細胞を採取することができません。このため、画像検査で卵巣がんの疑いがあると判断された場合には、まず手術を行い、切除した卵巣の組織診断を行って、がんかどうかを確定します。

卵巣がんの治療では、主に手術によりできるだけがんを取り除きます。多くの場合、手術の後に薬物療法も行います。

  • 出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)
    (https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html)

上皮内新生物とは

上皮内新生物とは

女性特有のがんのもう一つの特徴として、「上皮内新生物」と診断されるケースが多いということが挙げられます。上皮内新生物とは、がん細胞が上皮細胞に留まっているがんのことです。がんが、基底膜(きていまく)という薄い膜を破って深いところまで広がっていない状態です。上皮内がんと呼ばれることもあります。上皮内新生物は、比較的治療がしやすく、きちんと治療すれば転移の心配もありません。

上皮内新生物を補償の対象とするかは、がん保険により異なります。上皮内新生物でも通常のがんと同じ額の保険金が支払われる商品もありますが、一方、通常のがんより保険金が減額される(1/10など)商品や、上皮内新生物についてはそもそも補償の対象外としている商品もあります。女性の方はやはり、上皮内新生物も補償されるタイプのがん保険を選ぶのがおすすめです。

女性のがん保険の必要性

女性のがんの罹患率(20代から50代の働く世代の女性は男性よりもがんの罹患率が高い)

乳がん、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんといった女性特有のがんの好発年齢もあり、20代から50代までは男性よりも女性の方ががんの罹患率は高いというのが特長です。予防や早期発見に努めることは大切ですが、いま、がんに罹患した場合にはライフスタイルや働き方の変更を余儀なくされることがあるため、罹患した場合の生活の変化や、治療と仕事の両立についても考えていく必要があります。

女性ががんにかかった場合の治療費

医療費自体は公的医療保険に適用している場合は年齢や所得により異なりますが、医療費の1割から3割負担となります。1割から3割であっても医療費が高額になってしまう場合、医療費を軽減できる制度として「高額療養費制度」があります。医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月(歴月:1日から末日まで)で上限額を超えた場合、その超えた額を支給するというしくみです。上限額は、年齢や所得に応じて定められています。
健康保険証に書かれている保険者(協会けんぽ、健康保険組合、国民健康保険など)に手続き・申請し、限度額適用認定証を窓口で提示することによって、窓口での支払いを負担の上限額までに抑えることができます。
医療機関によってはマイナンバーカードにて利用することが可能です。高額な医療費が発生する場合であっても、保険証としてマイナンバーカードを使うことで、一時的に高額な医療費を自己負担したり、限度額適用認定証の手続きをする必要がなくなります。
69歳以下で一般的な所得の方の場合、高額療養費制度により1か月あたり約9万円(直近12か月のうち3か月該当すると4か月目からは多数回該当により44,400円)になります。

公的医療保険適用外の治療にかかる費用としては、入院中の個室の差額ベッド代や食事代、診断書代や医療機関までの交通費、抗がん剤の種類によっては脱毛時の医療用ウィッグ、リンパ節を取る手術をした場合にはリンパ浮腫予防の弾性スリーブ・ストッキングなどがあります。

治療にかかる費用自体は高額療養費制度の利用により、男性に比べて高いということはありませんが、働けなくなることでの収入減が家計に及ぼす影響は重要視していく必要があります。
社会保険に加入しているのであれば、がんにより働けなくなった場合に公的医療保険の傷病手当金が生活保障として受け取れますが、扶養内で働いている場合や自営業の場合は利用できませんので、収入減に対する保障は考えておく必要があります。

また、家事や育児を担っている方が治療中行えなくなった場合、家族や親族の協力が仰げない時に外食、家事代行、シッターといった外部へ依頼するための費用がかかることがあります。
よって、女性はライフスタイルや働き方、公的医療保険の加入状況により、一人一人自分にとってのがん保険の必要性について考えていく必要があります。

通常のがん保険と女性用がん保険の違い

保険会社によっては、女性用のがん保険を販売しています。通常のがん保険も女性用がん保険も、基本的な補償に関してはほとんど変わりませんが、女性用がん保険は、女性特有のがんの治療などの補償に特化しているため、次のような補償も付加されている場合があります。

  • 1.
    女性特有のがん手術への上乗せ補償(女性特定ケア給付金、女性特定がん治療給付金など)
  • 2.
    乳がん手術後の乳房再建術の補償(乳房再建給付金など)

しかしながら、上記の補償が上乗せされているため、その分、女性用がん保険は、通常のがん保険より保険料が割高に設定されていることに注意しましょう。

どちらを選ぶべき?

女性特有のがんは若いうちの罹患率も高いため、若いうちからがん保険への加入を検討する人も多いのではないでしょうか。女性特有のがんに備えるには、女性用がん保険がより手厚く治療費などを補償してくれるため魅力的に見えますが、その分保険料も高いです。若いうちは、一般的に収入もそんなに多くないと思われますので、保険料の負担が大きくなるのは家計にとっては厳しいかもしれません。

どちらを選ぶべき?

そして、重要なことは、通常のがん保険でも、基本補償部分によって、女性特有のがんに対する備えはある程度できるということです。加えて、通常のがん保険は、特に保険期間が決まっている掛け捨てタイプ(定期タイプ)のがん保険の場合、若いうちの保険料を安く抑えることができますので、先ほどの保険料の家計にとっての負担も心配する必要がありません。

補償と保険料を比較し、それぞれのバランスに注意して、自分に必要ながん保険を選ぶことが重要といえるでしょう。たとえば「若いうちの女性特有のがん罹患がすごく心配」、「親族で、若いうちに女性特有のがん保険に罹患した人がいる」といった場合でなければ、通常のがん保険で十分かもしれません。

女性のがん保険の選び方

女性のがん保険の選び方

通常のがん保険も女性用がん保険もさまざまな商品が出ている今、がん保険自体をそもそも、どのように選べばよいでしょうか。

女性と男性とでは、必要な補償(基本補償)はさほど変わらないといえます。現在は医療が発達し、がんは治る病気になりつつあり、がんによる入院日数も短期化する傾向にあります。しっかりと治療に専念するためにも、入院、手術、通院治療といった基本的ながん治療をしっかり補償してくれるがん保険を選ぶことが重要です。また、がんになったときの補償としての診断給付金や先進医療についても、補償範囲かどうか確認する必要があります。特に先進医療への補償は、適切な治療を受けるためにあったほうが安心といえるでしょう。加えて、女性特有のがんだけでなく、それ以外のがんへの補償も十分かどうかチェックしましょう。

女性の場合、がん保険は何歳から入るべき?

前述のように、若いうちは女性のほうが男性よりがんの罹患率が高くなっています。特に乳がんや子宮頸がんの罹患率は、30歳前後から急激に上昇していきます。そしてがん保険は、一度がんにかかってしまうと、たとえ年齢が若くても入ることは難しくなってしまうのです。女性の方は、特に20代など早いうちから、がん保険の加入を検討する必要があるでしょう。

女性の場合、がん保険は何歳から入るべき?

女性のがん保険の年代別加入率

2022(令和4)年度 生活保障に関する調査(※)によると、がん保険・がん特約の女性の加入率は、全生保で40.0%(男性38.0%)であり、3人に1人が加入しています。40代では50%を超えていることからも、2人に1人ががんへの備えを確保していることがわかります。しかし、がんの罹患率では女性は20代から30代に増える傾向がありますので、がんのリスクが高まる前に保険加入の検討がされるのが望ましいです。

  • 出典:(公財)生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」より

女性のがん保険に関するよくあるご質問

貯蓄型と掛け捨て型どちらを選べばいいですか?

貯蓄型のメリットは解約時や一定の年齢まで健康であった時にお金が戻ってくることですが、保険料が割高になることや、保険の見直しがしづらくなってしまうなどデメリットもありますので、貯蓄と保障は別に考えることが望ましいです。

がん保険の加入に年齢制限はありますか?また保険料の相場はどれくらいですか。

80代まで加入できるがん保険もありますが、保険料とかかる医療費(後期高齢者医療保険制度での上限額)における費用対効果も考えていくと良いでしょう。
現在、診断一時金の回数や治療別の特約、そして実費負担型などがん保険の保障のバリエーションは多くなっており、保険料もさまざまです。
たとえば、SBI損保のがん保険の場合、35歳女性の保険料は月々1,393円(※)でした。

  • 保険期間5年・がん診断保険金なし、2023年7月時点の保険料です。
  • 出典:国立がん研究センターがん情報サービス
    (https://ganjoho.jp/public/index.html)

執筆年月:2017年9月
(最終更新日:2023年8月3日)

執筆:一色 徹太(いっしき てつた)

執筆:一色 徹太(いっしき てつた)

日本生命でのファンドマネージャーや法人営業の経験をいかし、22年間の勤務後、独立系FPに転身。現在、一色FPオフィス代表として、個人相談や執筆、講演に従事。東証(東京証券取引所)で個人投資家向けデリバティブ講座も持つ。生命保険をはじめ、DC(確定拠出年金)、債券、ETF、デリバティブ、企業年金に特に精通。

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