がんの進行の程度を判定するための基準を「ステージ」といいます。「病期(びょうき)」とよばれることもあります。がんを理解するためには、このステージについて知る必要があります。今回は、それぞれのステージの特徴や主な治療方法について解説します。
がんの「ステージ」とは
がんのステージの分類にはさまざまな方法がありますが、国際対がん連合(UICC)の「TNM分類」がよく知られています。TNM分類では、がんのステージを、進行度によって、初期段階の0期から最も進行している4期まで、5つに分類しています。
ステージの判定方法
TNM分類では、
- ・T因子:がんがどのくらいの大きさになっているか
- ・N因子:周辺のリンパ節への転移の有無
- ・M因子:ほかの臓器への転移の有無
の3つの指標を用い、ステージを判定します。
各ステージの特徴
ステージ0から4の定義は、次のようになっています。
- 0期:がん細胞が上皮内にとどまっており、リンパ節への転移もない。
- 1期:がんが上皮層を突き破っているが、筋肉の層にとどまっている。リンパ節へは転移していない。
- 2期:がんが筋肉の層を超えており、リンパ節へ転移しかけている。
- 3期:がんがリンパ節へ転移している。
- 4期:がんがほかの臓器へ転移している。
なお、上記のステージの分類はあくまでも目安であり、がんの種類により異なる場合があります。
ステージの進行によって変わる生存率
がんは、ステージが進行するほど生存率が低下します。
全がん協(全国がんセンター協議会)が2018年2月28日に公表した「全がん協生存率調査」によれば、ステージ1であれば、胃がん、大腸がん、肺がんなど多くのがんで5年生存率が80%を超えていますが、どのがんにおいても、ステージが進むにつれ5年生存率が低下していきます。
また、ステージ3からステージ4に移行すると、多くのがんで、5年生存率が急激に低下しています。ただし、前立腺がんや甲状腺がんのように、ステージ4でも5年生存率が50%を上回っているがんもあります。だからといって、必ずしもステージ4では「余命わずか」というわけではありません。
- [出典]全国がんセンター協議会「全がん協生存率調査」(http://www.zengankyo.ncc.go.jp/etc/index.html)
治療法もステージごとに変わる
がんの治療法は、ステージに基づいて決まります。たとえば大腸がんであれば、
- ・深達度:がんが大腸の壁のうちにどの程度入り込んでいるか
- ・浸潤の程度:周囲組織への広がり
- ・リンパ節への転移の有無
- ・ほかの遠隔臓器(肝臓、肺など)への転移の有無
などにより、ステージごとに以下のような治療を行います。
- ・0期、1期(軽度浸潤):内視鏡治療
- ・1期(深部浸潤)、2期、3期:外科手術(開腹手術、腹腔鏡手術)および手術後の抗がん剤治療、放射線治療
- ・4期:対症療法、緩和手術、化学療法(抗がん剤治療)放射線治療など
- [出典]国立がん研究センター がん情報サービス「各種がん103 大腸がん」治療(P10〜P15)
早期発見が大切
がんにかかってしまった場合でも、ステージごとの治療法を正しく理解しておくことで、具体的な治療計画を立てることができ、安心感も得られるでしょう。
しかしながら、がんはやはり、早期発見が何より大切です。医療技術の進化もあり、がんは今や「治る病気」になっており、先ほどの5年生存率のとおり早いステージで発見することができれば、完治する可能性が十分にあります。
早期発見のためには、定期検診を受けることが重要です。自覚症状がないままステージが進行してしまうがんもあるため、忘れず定期的な検査を心がけたいものです。また、女性がかかることの多いがんである乳がんは、セルフチェックも可能ですので、日ごろから自分の体に異常がないか確認するようにしましょう。
最後に、どんな人でも、がんを完全に予防することは残念ながら不可能です。万一がんにかかってしまったとき、強い味方になってくれるのががん保険です。がんに対して不安がある人は、がん保険への加入をおすすめします。
執筆年月:2018年6月
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執筆:一色 徹太(いっしき てつた)
日本生命でのファンドマネージャーや法人営業の経験をいかし、22年間の勤務後、独立系FPに転身。現在、一色FPオフィス代表として、個人相談や執筆、講演に従事。生命保険をはじめ、DC(確定拠出年金)、債券、ETF、デリバティブ、企業年金に特に精通。
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