がん患者を支える公的サポートを知っておこう!

高齢化に伴いがんの罹患率は増加傾向に

高齢化に伴いがんの罹患率は増加傾向に

4月下旬、国立がん研究センターが気になるデータを発表しました。今年(2015年)、新たにがんと診断されるがんの数は98万2100例、がんで亡くなる人は37万900人になるとの予測です(※1)。がんと診断される数は昨年(2014年)より約10万例多くなるとのことです。その理由は、同センターは、高齢化が進むことと、がん患者の情報登録精度が向上したことをあげています。今年、新たにがんと診断される98万2100例の1例に、皆さま(筆者も)が入らないことを切に願っています。

さて、がんにかかってしまうと、がん患者として治療を受けることになります。今回は、がん患者を支える公的サポートの主なものをご紹介します。

まず、がん患者の治療費の一部をずっとサポートし続けてくれるのは、公的健康保険(健保)です。健保は、年齢による自己負担割合を医療機関の窓口で支払うだけで治療が受けられます。小学校入学後から70歳未満の人の自己負担割合は3割です。高額な治療・投薬を受けたり、入院が長引いたりすると、3割負担でも金額は大きくなります。特に、がん治療・投薬は高額なものもあるので、自己負担額は大きくなりがちです。

健保には、このような場合の負担軽減策として、高額療養費制度が設けられています。この制度は、同じ人が同じ月に、医療機関でかかった医療費が自己負担限度額を超えた分は払わなくてもいいというもの。自己負担限度額は、年齢と所得で異なり、70歳未満の人は所得で5つに区分されています。自己負担限度額の計算式は下表のとおりです。高額療養費の対象となる月が多くなると、多数該当として4か月目から負担が軽くなります。

高額療養費制度の自己負担限度額(70歳未満)

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2015年1月診療分から
所得区分 ひと月の自己負担限度額 多数該当
@区分ア
(標準報酬月額83万円以上)
252,600円+(総医療費−842,000円)×1% 140,100円
A区分イ
(標準報酬月額53万〜79万円)
167,400円+(総医療費−558,000円)×1% 93,000円
B区分ウ
(標準報酬月額28万〜50万円)
80,100+(総医療費−267,000円)×1% 44,400円
C区分エ
(標準報酬月額26万円以下)
57,600円 44,400円
D区分オ(低所得者)
(市区町村民税非課税者)
35,400円 24,600円
  • 区分アまたは区分イに該当する場合、市区町村民税が非課税でも区分アまたは区分イに該当。
  • *
    全国健康保険協会のWebサイトを参考に筆者作成。

高額療養費制度で医療費の負担は軽くなりますが、高所得の方は、応分の負担をしてもらうという主旨で、今年1月から自己負担限度額が上がっています。

次に、がん治療中の生活費の保障です。これについては、健保の傷病手当金がサポートしてくれます。ただし、会社員が加入している健保に限られます。傷病手当金は、傷病の療養のために会社を休み始めて4日目から最長1年6か月まで、1日当たり標準報酬日額の3分の2が支給される制度です。もちろん、がん治療も対象です。

傷病手当金制度のない国民健康保険加入者は、生活費の公的サポートは期待できないので、貯蓄を厚くしておくか、所得を補償する保険での備えが必要です。

治療のかいなく、または発覚したときにすでに末期で、自宅などで療養をする状況では、40歳以上の人なら、公的介護保険のサポートが受けられます。公的介護保険は、65歳以上で要介護状態になると適用されるものですが、16種類の特定疾病が原因で要介護状態になった場合にも例外的に適用されるのです。自宅などで療養中の末期のがんは特定疾病の1つにあげられています。

がんにかかったときは、これまでご紹介してきたような公的サポートを受けられますが、治療費の自己負担はあなどれませんし、治療が長引くと経済的なダメージは深刻でしょう。もし、高額な先進医療の技術を受けることになるとなおさらです。それに、がんにかかると仕事ができなくなったり、仕事をセーブしなければならなくて収入が減ると生活そのものが大変です。そこで、せめて、治療費を気にしないで治療を受けられるがん保険に入っておきたいものです。

  • 〔出所〕2015年のがん統計予測<国立がん研究センターがん対策情報センター>

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