火災保険における家財の補償について解説します

火災などが起こったとき、建物だけではなく、その建物内にある家具や電化製品といった「家財」も損害を受けることがあります。家財は火災保険に入るとき、建物と一緒に補償の対象にするかどうか選ぶことができます。ここではおさえておきたい家財の補償のポイントと必要性について解説します。

目次

家財とは

火災保険は文字通り、家が火事になってしまったときや、災害で被害を受けたときにその損害を補償してくれる保険です。ここでいう家とは、建物とそれに付属している浴槽や調理台、ふすま、建物に取り付けてあるエアコンなどです。

それに対して、引っ越すときに運び出すようなものは「家財」とされ、火災保険で建物のみを補償の対象としている場合は補償対象になりません。たとえば、タンスや中の衣類、ベッドや寝具、机・本棚・本、家電製品などが家財とされます。すべて数え上げてそれらをもう一度購入する金額を考えると、かなりの額になると思います。家財は、家財を保険の対象とした火災保険を契約しておくことで補償されます。

建物の付属品ではありませんが家財にも含まれないものがあります。現金・小切手・有価証券、動植物、データ、自動車などです。高価な貴金属や書画骨董なども家財には含まれません。

高価な貴金属や書画骨董などを守るには

住宅内にある自分のものはほとんどが家財と言えるでしょう

では、高価な貴金属や書画骨董などはどのように守ればよいでしょうか。これらは「高額貴金属等」を補償の対象に設定することによって、家財とは別枠で補償を付けます。
「高額貴金属等」は、保険会社によっては「明記物件」という名称で表されることもあります。「明記物件」は「1個(1組)の価額が30万円を超える貴金属、宝石、書画、骨董等」と規定されています。別枠で補償を付けるものについては契約時に担当者とよく相談して決めるのがよいでしょう。

30万円以上でも日常的に使っている楽器、テレビやパソコンなどは家財になりますので、別枠で補償を付ける必要はありません。鑑定士が必要な、定価のないようなものや、普通の家庭にはないような高価なものが「高額貴金属等」にあてはまると考えます。絵画や高級時計などは相談しましょう。

家財はどんなときに補償される?

家財は、具体的にどのようなときに補償されるのでしょう。
まず、建物を補償対象とする火災保険と同じく、火災や水災、風災などの自然災害や日常生活のトラブルなどで、家財に損害が生じた場合に補償されます。
たとえば、近くの電柱に落雷があり迷走電流でパソコンが壊れた、掃除機をぶつけて家具を壊したなどという、日常生活で起こりがちなトラブルによる損害についても補償します。

自転車が盗難にあった場合

家財の補償範囲についての考え方は建物の場合と同様です

火災や自然災害の被害にあうことはあまり日常的とは言えませんが、自転車や原付バイクが盗難にあうことは、起こり得るのではないでしょうか。自転車や原付バイクは建物内にあるときは保険の対象に含まれます。したがって盗難の補償を付けている場合は、自宅に置いてある自転車などが盗難にあった場合も保険金が出ます。ただし、駅前の自転車置き場など敷地外に置いてある自転車などが盗難に遭った場合は、補償の対象になりませんので注意が必要です。

家財の保険金額の決め方

家財の保険金額は幾らくらいを目安に設定するのが適切なのでしょうか。家財の保険金額は、今の持ち物が幾らあればまた揃えられるかを表す「再調達価額」を基準に設定します。と言ってもよくわからない方も多いでしょう。保険会社は家財の再調達価額の目安(評価額)を提示してくれますので、それを参考に決めるとよいでしょう。

下表は保険会社が提示する評価額の一例です。

お住まいの専有面積

33m2未満

33m2〜66m2未満

66m2〜99m2未満

99m2〜132m2未満

132m2以上

保険金額の目安

450万円

880万円

1,050万円

1,490万円

1,980万円

「再調達価額」とは

再調達価額とは、損害を受けたものと同等のものを新たに購入する際に必要な価格のことです。
家財には再調達価額を超える保険金額を設定できません。

保険料を抑えるポイント

保険会社に提示された評価額は部屋の広さや、年齢、家族構成といった指標によって評価されていますので、実際に所有する家財によっては高いと感じることがあるかもしれません。保険会社が示す評価額はあくまでも一般的な価額であるため、持っている洋服に古着が多いといった場合など、個人の消費性向によっては評価額が実際の再調達価額より高いケースもあります。同等のものを買うのに十分な保険金額を設定していなければ意味がありません。このように、評価額よりも実際の再調達価額が低いこともありますので、保険金額を下げることも有効です。

保険金額を抑えればその分保険料も安くなりますが、損害を受けたときに十分な補償が受けられないと意味がないので、バランスを考えることが大切です。反対に、必要以上に大きく見積もっても、実際の損害額以上は保険金が出ませんから、過大な評価は保険料の無駄になります。

家財の補償は必要?不要?

不明な点は損保会社に問い合わせてみるのもおすすめです

建物内にあるほとんどの家具や家電、生活用品が家財にあてはまるため、火災などの被害にあった際、損害額は非常に大きくなります。生活を立て直すための家財を買い直すには、一度に多くの金額を負担することになってしまいます。また、家財は建物と同様、火災や水災などの災害にあった際だけではなく、日常生活におけるトラブル時にも補償の対象となりますので、生活する環境を整えるためにも、日常で起こり得る「もしも」に備えるためにも、家財にも保険をかけたほうが安心と言えるでしょう。家財の補償は必要だと考えます。

まとめ

火災や災害に見舞われると、ほとんどの場合、建物だけでなく、中の家財も被害を受けます。消火の水をかぶって家電製品が壊れたり、すすけた匂いが染みついたり衣類が使い物にならなくなったりします。これらをすべて買い替えるとなるとかなりの金額を要します。また、家に住めなくなって仮住まいをするにも家具や衣食住に必要なものを揃えなければ生活がはじめられません。火災保険の費用保険金でもある程度は対応できますが、家財を補償の対象にしていないと、これらの費用は十分には給付されません。家財の補償は水濡れや破損、盗難などによる損害も補償内容に含むことができますので、火災や災害時の備えとして、家だけでなく、家財も補償の対象とすることをおすすめします。

執筆年月:2018年1月
ファイナンシャルプランナー 桑野 恵子

桑野 恵子(くわの けいこ)(CFP®)

自宅や収益不動産の売買、賃貸にかかわり、不動産の契約を25軒以上してきました。女性が一人で立ち向かうのは手ごわい相手とどう対等なパートナーシップを築くかに腐心してきた経験から、知らないために損をしている多くの方を救いたいと、常にお客様に寄り添う事を第1にファイナンシャルプランナーとして活動しています。保険も投資信託も不動産も壺も販売するものを持たないFPです。
コーディネート (株)優益FPオフィス

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