【法人向けがん保険コラム】第6回 がん治療と仕事の両立支援を行うメリット - SBI損保のがん保険

【法人向けがん保険コラム】第6回 がん治療と仕事の両立支援を行うメリット

株式会社M&F パートナーズの高橋です。
第5回のコラムでは「三大治療の現状と大腸がん・前立腺がん・乳がん治療の現状」というお話をさせていただきました。入院中心の治療から通院中心の治療へと移行している現在のがん治療の実態を知ることが、より実践的ながん治療と仕事の両立支援策の策定には重要だと思います。

第6回目では、「がん治療と仕事の両立支援を行うメリット」についてお話をさせていただきます。

これまでお話をさせていただいた通り、がんは早期発見することが出来れば克服できる病気にもなっています。一方でがん治療をしながら仕事をすることを考えた場合、いまだ多くの課題があることも事実です。結果として、がん治療と仕事の両立に悩み退職してしまう人も後を絶ちません。

こうした状況の中、がん治療と仕事の両立支援を行うことは非常に重要であり、企業と従業員さま双方に大きなメリットをもたらします。

まずは企業にとってのメリットからお話をします。

一番大きなメリットは、がんに罹患した従業員さまの退職を防ぐことが出来るということです。
従業員さまががんに罹患し退職してしまうと、長年の勤務経験によって培われてきた貴重な経験則やノウハウが失われてしまうことになります。少子高齢化が進み限られた人材を有効活用し生産性の向上を目指している企業において、退職による人材の喪失は何よりも大きな経営課題となっています。
第4回のコラムでもお話をさせていただきましたが、国立がん研究センターが 2020 年 10月に発表したアンケート結果(※1)によると、がんと診断確定された患者さんの約2割の方がお仕事をお辞めになっています。またお辞めになった方の 56.8%の方が初回治療開始までにお辞めになっており、「周囲に迷惑をかけたくない」、「体力的に続ける自信がなくなった」ことを理由とする方が非常にたくさんいらっしゃいました。
「がん治療と仕事の両立支援」を行い、従業員さまが安心して治療を行うことができる環境を準備することが出来れば、従業員さまのがん罹患による退職を防ぐことができるようになります。

  • ※1
    国立がん研究センターが2020年10月に発表したアンケートの分析結果

また「がん治療と仕事の両立支援」を行うことにより従業員さまは安心して仕事ができるようになり、結果として優秀な人材の定着を図ることができるようになります。
さらにがんに対する従業員さまの意識を高めることができることから、家族を含めたがん検診や精密検査の受診率向上やがん以外の病気やけがによる両立支援にも柔軟に対応できる企業風土が醸成できます。
「がん治療と仕事の両立支援」を行うことは、健康経営への意識の高まりという観点からも非常に重要であり、人材採用時にも他社との差別化を明確にすることができます。

このようにがん治療と仕事の両立支援を行うことは、企業側に大きなメリットをもたらすことになります。

ここからは、従業員さまのメリットについてお話をします。

がんに罹患した多くの従業員さまは、次の4つの問題を挙げています。
1つ目の問題は、収入の減少や治療費に関する「経済的な問題」です。2つ目の問題は、治療方法や治療中の体調に応じた「働き方の問題」です。3つ目の問題は、がんという病気や治療方法や副作用等に対する「職場の理解・風土に関する問題」です。4つ目の問題は、相談相手が見つからず孤立してしまう「相談先の問題」です。

こうした従業員さまが挙げている問題を解消してあげることが、従業員さまにとってのメリットになります。

東京都保険医療局が行った調査によると、がん患者さんは治療と仕事を両立する上で困難であったことについて、「経済的な問題」については、以下のように感じています。(※2)

  • 治療費が高い、治療費がいつ頃、いくらかかるか見通しが立たない。
  • 働き方を変えたり休職することで収入が減少する。

「働き方の問題」については、以下のように感じています。(※3)

  • 体調や治療の状況に応じた柔軟な勤務(勤務時間や勤務日数)ができない。
  • 治療をしながら仕事をすることで人事評価が下がる。
  • 治療の後遺症や副作用等の影響で通勤することが困難
  • 給休暇等が不足して仕事を継続することが困難

「職場の理解・風土に関する問題」については、以下のように感じています。(※3)

  • 治療・経過観察・通院目的の休暇・休業が取りづらい。
  • 病気や治療のことを職場に言いづらい雰囲気がある。
  • 治療をしながら仕事をすることについて職場の理解がない・乏しい。

「相談先の問題」については、以下のように感じています。(※3)

  • 職場内にがん治療と仕事の両立の仕方や公的医療保険制度について詳しい相談相手がいない。
  • 治療と仕事の両立について誰(どこ)に相談すればよいか分からない。
  • ※2
    東京都保健医療局「がんになった従業員の治療と仕事の両立支援サポートブック」
  • ※3
    東京都保険医療局「東京都がん医療等に係る実態調査結果(がん患者の就労等に関する実態調査)」(平成 31 年 3 月)

また患者さんにとって、働くことは生きがいでもあります。
生活のため、治療費のためだけに働くのではなく、仕事にやりがいを感じ安心して働き続けることができる環境があれば、従業員さまの会社に対する満足度は向上します。
さらにがんだけではなく、他の疾患や障害等においても両立支援を行うことが奨励される企業風土が醸成されることとなり、結果として優秀な人材の定着を図ることができるとともに、生産性の向上を図ることもできるようになります。
健康経営やダイバーシティ・マネジメントの観点からも、「がん治療と仕事の両立支援」を行うことは非常に重要です。

今回は「がん治療と仕事の両立支援」を行うメリットについてお話をさせていただきました。
では効率的に「がん治療と仕事の両立支援」を行うためには、具体的に何が必要なのでしょうか?
第7回と第8回のコラムでは、「両立支援を行うための環境整備」について、2回に分けてお話をさせていただきます。

執筆者 高橋 義人(たかはし よしと)

株式会社M&Fパートナーズ代表取締役

がん治療支援者/がんファイナンスアドバイザー

一般社団法人 日本遺伝子治療医学研究会 
医療コーディネーター

https://mfpartners.co.jp/

1988年に明治大学を卒業後、外資系大手生命保険会社に23年間勤務。静岡・埼玉・大阪にて支社長を務め、2011年に独立。
その後、「がん治療とお金」のコンサルティング会社を設立し、現在に至る。医療コーディネーターとしてがん患者と向き合い、がんの治療相談・病院紹介・治療紹介・病院へのアテンド等の患者支援活動の傍ら、セミナー講師として「がんに備えるマネープラン」「最先端がん治療とがんファイナンス」「あなたの知らないがん治療最前線」「会社をがんから守る社長さんのためのがんファイナンス」「お客様をがんから守る10ヶ条」等の講演を日本社大手生命保険会社や外資大手生命保険会社、MDRT日本会、ライオンズクラブ、一般企業の人事部などからの依頼により、日本全国で年間150回以上行っている。

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