株式会社M&F パートナーズの高橋です。
第6回のコラムでは「がん治療と仕事の両立支援を行うメリット」というお話をさせていただきました。がん治療と仕事の両立支援を行うことは、企業だけでなく従業員さまにも多くのメリットを与えます。
大切な従業員さまががんに罹患したことで退職をすることなく、安心して働き続ける環境を作ることが、企業の継続的な発展を支えるためにも重要です。
では実効性のある「がん治療と仕事の両立支援」を行うためには、何が必要なのでしょうか?
第7回目と第8回目では2回に分けて、「両立支援を行うための環境整備」についてお話をさせていただきます。
第7回目では、企業目標や基本方針等の策定と表明、研修や勉強会等を通した具体的な啓蒙活動についてお話をさせていただきます。
皆さんの企業では、「がん治療と仕事の両立支援」がどの程度進んでいるのでしょうか? まず初めに取り組んでいただきたいことは、現状の把握です。
従業員さまにアンケートを取り、現状におけるがん治療と仕事の両立支援についての意見を聞いてみてください。
「もしがんなどの病気の治療や検査のために2週間に1度程度病院に通う必要がある場合、働き続けられる環境だと思いますか?」などと質問をしてみてください。
内閣府が 2023 年7月に実施した世論調査によると、上記の問いに対して「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」と回答した方の割合は、45.4%にとどまりました。(※1)
「がん治療と仕事の両立支援」を行いたいことを伝え、忌憚のない意見を聞くことから始めるようにしてください。
- ※1内閣府 がん対策に関する世論調査(令和5年7月調査)
次にお願いしたいことは、アンケートの回答を踏まえ、「がん治療と仕事の両立支援」に関する企業目標と基本方針を策定することです。
難しく考えずに、実践的な企業目標と基本方針を策定してください。
出来上がりましたら、それを従業員さまに周知する方法を検討し、経営者の皆さま自らが、「がん治療と仕事の両立支援に関する取組宣言」を行ってください。
経営者の皆さまが行うことが重要です。経営者の皆さまが宣言をすることで、がんに罹患した従業員さまだけでなく他の従業員さまに対しても「病気になっても働き続けられる!」「辞めなくていいんだ!」という安心感を与えることになります。
難しい話をする必要はありません。「がんに罹患しても、辞める必要のないこと」を伝えてあげてください。
宣言を行うことは重要ですが、宣言を行っただけでは十分な効果は期待できません。
がんに罹患した従業員さまが安心できるよう、また周りの従業員さま達の理解や協力が得られるよう、企業目標や基本方針を会社全体で共有し、「がん治療と仕事の両立支援を行うことが当たり前だ!」という企業風土を醸成することが重要です。そのための研修や勉強会を企画し、継続した啓蒙活動の実施について検討してください。
研修や勉強会については、長時間行うことが重要なのではなく、短時間であっても継続的に開催し続けることが重要です。2か月に1回でも、3か月に1回でも構いませんので、まずは 1 年間の開催スケジュールを検討してください。
研修や勉強会では、がんやがん治療に関する基本的な情報提供も行ってください。
がんも早期発見することが出来れば克服できる病気になっていること、早期発見のためにはがん検診等の受診が大切なこと、要精密検査となった場合には迅速な対応が必要なこと、がんの三大治療と通院治療が中心となってきている治療現場の現状、がん治療に備えた お金の準備(保険の確認等)の必要性等についてお話になってください。
社内規定についても、十分に理解が進んでいない場合があります。会社が既に準備をしている支援制度などとともに、社内規定についても説明をしてください。
また高額療養費制度等、国からの支援についても説明をしてください。
さらにがん治療と仕事の両立支援に関する意識を浸透させるためには、従業員さま一人一人に考えさせる機会を作ることも有効です。部署ごとに行う朝礼や会議の際、順番に「がん治療と仕事の両立支援」に関する自分自身の考え方や会社への提案等について、発表してもらう機会を作るようなことも検討してみてくだい。
今回は「両立支援を行うための環境整備」について、具体的には企業目標や基本方針等の 策定と表明、研修や勉強会等を通した啓蒙活動についてお話をさせていただきました。
第8回のコラムでは、「両立支援を行うための環境整備」の2回目として、相談窓口の設置・ 情報の取り扱い・復職プランの策定について、お話をさせていただきます。