株式会社M&F パートナーズの高橋です。
第7回のコラムでは「両立支援を行うための環境整備」について、具体的には企業目標や基本方針等の策定と表明、研修や勉強会等を通した啓蒙活動についてお話をさせていただきました。
難しく考えていただく必要はありません。まずは取り組んでみることが重要です。今できることから始め、時間をかけて社内に浸透させていくようにしてください。
第8回目では、「両立支援を行うための環境整備」の2回目として、相談窓口の設置・情報の取り扱い・具体的な制度設計・復職プランの策定について、お話をさせていただきます。
第6回のコラムでお話した通り、従業員さまの中には「誰に相談すればよいのかわからない」「がん治療と仕事の両立支援や公的医療保険制度に詳しい人がいない」など、相談先に対する不安を抱えている方もたくさんいらっしゃいます。
そうした不安を解消するために、社内に「相談窓口」を設置してください。
従業員さまががんに罹患した場合の対応マニュアルを作成し、相談窓口(両立支援担当部署)と所属長や上司等が速やかに連携を取ることができるよう、それぞれの役割を明確にしておいてください。
また「がん治療と仕事の両立支援」は、労働安全衛生法に基づく健康診断において把握した場合を除いては従業員さまからの申し出を原則とすることから、従業員さまが安心して 相談を行うことができるよう、相談窓口設置の周知を徹底し相談しやすい環境作りを心掛けてください。
また従業員さまのがんに関する情報は「要配慮個人情報」に該当するため、申し出が行われた場合の当該情報の取扱い等についても明確に規定する必要があります。
次にお願いしたいことは、がん治療と仕事の両立支援のために必要な制度や体制の整備です。第5回のコラムでお話をした治療現場の現状を踏まえ、がんに罹患した従業員さまが安心してがん治療と仕事の両立を行うことができる環境が準備できているかを確認してください。
制度設計に関する具体的な確認項目について、2点お話をします。
まずは休暇制度や勤務制度の整備です。
放射線治療や抗がん剤治療等、現在は通院によるがん治療が増加していますが、そうした治療を支えるための環境整備が出来ているかどうかを確認してください。
- ①休暇制度
労働基準法に基づく年次有給休暇は1日単位で取得することが原則ですが、労使協定を結べば1時間単位で有給を取得することも可能になります。短時間の治療を繰り返し行う放射線治療を受ける従業員さまにとっては、欠かせない制度となります。
また傷病休暇等、入院治療や通院治療のために年次有給休暇とは別の独自の休暇制度を制度化することも必要です。 - ②勤務制度
時差出勤制度・短時間勤務制度・在宅勤務制度、こうした制度が御社には準備されているでしょうか。これらの制度は事業者が自主的に設ける制度ですが、がん治療の多様化に伴い必要とされる制度となっています。
これらの制度を導入することにより、がん治療中の従業員さまの身体的負担を大きく軽減することができます。
例えば時差出勤制度を導入した場合、始業や終業の時間を変更することにより、がん治療中の従業員さまの出勤の際の身体的負担を大きく軽減することができます。
また短時間勤務制度(育児・介護休業法に基づく短時間勤務制度とは別のものです。)や在宅勤務制度の導入は、身体的負担の軽減だけでなく、復職プランを策定する際にも有効です。
最後に復職プランの策定についてお話をします。
がん治療が終了し従業員さまが職場復帰を希望された場合、スムーズな職場復帰を果たすために復職プランの策定が必要になります。
本人や主治医から情報収集を行い、個別に「復職プラン」を策定してください。その際、「治療に必要な時間の確保」「副作用や後遺症の仕事への影響」、また「担当業務の変更」や「時差出勤」「短時間勤務」等の会社の制度を利用しつつ、両立支援担当部署・所属長・人事担当者等の関係者の意見も聞きながらプラン策定を行ってください。
復帰直後は上司の方々とのこまめな面談を心掛け、体調の確認や業務上の配慮も引き続き行ってください。
今回は「両立支援を行うための環境整備」の2回目として、相談窓口の設置・情報の取り扱い・具体的な制度設計・復職プランの策定についてについてお話をさせていただきました。
早期発見が出来た場合、既にがんは克服できる病気にもなっています。がんを克服し職場復帰を果たしたすべての従業員さまが、自分らしく生きることができ、生きがいを持って働くことができる社会を実現するために、「がん治療と仕事の両立支援」に積極的に取り組んでいただきたいと思います。
「がんと診断されても、すぐに仕事を辞めないでください!」と、すべての従業員さまにお伝えください。
最終回となる第9回のコラムでは、「がん治療を支える費用面でのサポート」について、お話をさせていただきます。