火災保険の契約者は保険料の控除を受けられるのでしょうか

保険料の中には年末調整や確定申告の際に必要経費として控除されるものがあります。生命保険や医療保険などの保険料は生命保険料控除などの対象となっていますが、自宅や家財を補償する火災保険の場合の控除はどうなるのでしょうか。
今回は、火災保険と税金の関係について解説します。

目次

火災保険は保険料控除の対象にならない

火災保険料は通常控除の適用は受けられません

実は大変残念なことに、火災保険の保険料は、税制上、控除の対象外です。

以前は「損害保険料控除」という制度がありました。ただ、平成18年の税制改正により、翌年の平成19年分からこの制度は廃止になってしまいました。その代わり、新たに登場したのが、地震保険を対象にした「地震保険料控除」です。

ただし、経過措置として「旧長期損害保険料」の場合は、一定額が控除の対象になります。
「旧長期損害保険料」とは、(1)平成18年12月31日までに締結した契約(保険期間または共済期間の始期が平成19年1月1日以後のものは除く)、(2)満期返戻金などのあるもので保険期間または共済期間が10年以上の契約、(3)平成19年1月1日以後にその損害保険契約などの変更をしていないものになります。つまり、平成18年12月31日までに、満期返戻金などのある10年以上の長期火災保険に加入した場合は対象になる可能性があります。ですから、対象になりそうな火災保険などに加入している場合、確認する必要がありそうですね。

地震保険は保険料控除の対象に

日本は地震大国です。一昨年の「平成28年(2016年)熊本地震」のような震度6以上の巨大地震が数年に1度は起きていることからも、地震保険は大切な制度で、社会的な意義からも広く加入が望まれる保険です。

知っておきたい地震保険の基礎知識
知っておきたい地震保険の基礎知識

  

地震保険は、地震保険法により、単独では加入できません。火災保険とセットで加入することになっている保険で、火災保険ではカバーできない地震や噴火、津波などによる損害を補償します。今回は知っておきたい地震保険の特徴や注意点、火災保険との関係について解説します。

つまり、国民がきちんと地震への備えを行えるように、地震保険への加入を促進したい、という政府の意向があります。
そのような理由から、平成19年分の確定申告から、従来の「損害保険料控除」に代わり、地震保険を対象にした「地震保険料控除」に制度が変更されました。

地震保険料控除とは

地震保険料は限度額までは控除を受けることができます

地震保険は火災保険とセットで加入するしくみになっていますから、火災保険料が控除の対象外でも、地震保険料の部分は控除の対象になるわけです。
具体的には、1年間の保険料に応じて一定の金額が課税所得金額から控除されます。

国税庁のホームページによると、地震保険料控除の対象となる保険や共済の契約は、一定の資産を対象とする契約で、地震などによる損害で生じた損失の額を補填する保険金または共済金が支払われる契約です。また、対象となる契約は、自己や自己と生計を一にする配偶者その他の親族の所有する居住用家屋または生活に通常必要な家具、じゅう器、衣服などの生活用動産を保険や共済の対象としているものです。

控除額は、保険料が5万円以下の場合、その支払額の全額が、保険料が5万円を超える場合は5万円が控除されます。
前述の旧長期損害保険料があり、火災保険の保険料が控除される場合も、控除額の合計は5万円が上限となりますから、両方の控除額がある場合、注意しましょう。

押さえておきたい地震保険料控除のポイント

前述のとおり、地震保険は、単独で契約するのではなく火災保険とセットで契約します。
そのため証券などには火災保険と地震保険の保険料が合算して記載されていることがあります。

税務申告は年末調整にしろ、確定申告にしろ、電子申告(e-Tax)にしろ、自分自身で数値を記載・入力する必要があります。
ですから、保険料控除の対象となる地震保険の払込保険料をしっかり確認し、間違いの無いように対応する必要があります。注意しましょう。

控除証明書はどうやって受け取る?

支払った損害保険料が地震保険料控除の対象になるかどうかは、保険会社などから送られてくる証明書によって確認することになっています。

控除証明書は、契約後に送付される保険証券に添付されていることが多いです。保険証券が届いたら、控除証明書についても確認しましょう。

2年目以降は、毎年10月頃に保険料控除証明書はがきが発送されることが多いようです。
控除を受けるには、この証明書(はがき)を確定申告書に添付するか、申告書を提出する際に提示することが必要になります。

複数年分の保険料を一括で支払った場合はどうなる?

保険料控除額を間違えないよう契約内容をしっかり確認しましょう

トータルの保険料を節約するために複数年分の保険料を一括して支払うことがあります。複数年分の保険料を一括で支払った場合は、支払った年だけ控除されるのではなく、毎年控除の対象になります。
その金額は、「一括払保険料÷保険期間(年)」で算出した、1年分の保険料金額が控除保険料になります。ご注意ください。

まとめ

火災保険を契約する際、地震保険も付帯するとその分出費が大幅に増えてしまうように感じられます。
ただ、実際はその分、補償内容もUPし、地震保険料控除を受けることができますから、家計の負担感をある程度は抑えられるでしょう。
ですから、地震保険に加入している場合は忘れずに、年末調整や確定申告で、控除を活用するようにしましょう。

執筆年月:2017年12月
ファイナンシャルプランナー 佐藤 益弘

佐藤 益弘(さとう よしひろ)

CFP®、マイアドバイザー®登録ファイナンシャルプランナー。株式会社優益FPオフィス。 2000年の開業以来、常にお客さまに寄り添うサポーターであり続けるため、商品販売を伴わないファイナンシャルプランナーとして活動中。最近は住宅購入や住宅ローンの見直し、実家の空き家問題など不動産関連のご相談が多い。

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