マンションを購入した場合も火災保険を契約しましょう

分譲マンションを購入した際、つい忘れてしまいがちなのが、火災保険への加入です。一軒家でもマンションでも、火災や地震、その他災害の被害にあうリスクはあります。今回は、マンションならではの視点で、火災保険の補償の選び方の目安を説明します。

目次

マンションにも火災保険は必要

火災や類焼による損害額は時には非常に大きくなってしまうことも

よく「分譲マンションに火災保険は不必要ではないか?」という質問をいただきます。確かに木造が9割以上である一軒家に比べ、分譲マンションは鉄筋コンクリート造がほとんどですから、ハード面で火事に強いのは間違いありません。ただ、マンションが被る損害は火災に限ったことでもありません。マンションが故に備えておかなければいけないリスクもたくさん存在します。

マンションはご近所との間が壁一枚で仕切られ、両隣・上下が密着しているのが特徴です。ですから、万が一、災害が発生した際に、ご近所から被害を受けてしまったり、逆に被害を与えてしまったりする可能性は一軒家以上に高いと言えます。

基本的に、わが国では失火責任法という法律があり、重過失がない限り、出火元に責任を負わせられないことになっています。つまり、類焼で被害を被った場合、自分の財産は自分で守らなければいけないということになります。そのために火災保険があるので、賃貸マンションの大家になる人だけではなく、分譲マンションを購入する人にも火災保険は必要になります。

逆に自分が火元になった場合、重過失でなければ、責任は負いません。しかし、重過失と認定された場合や、その後のご近所付き合いを考えるとかかった費用を負担するなどして一定の責任を取りたいという心情も働くでしょう。そのような場合に備えて、個人賠償責任保険や類焼損害補償特約に加入しておくのも一考です。

共用部分、専有部分とは

共用部分は基本的に入居者全員が使えるスペースです

分譲マンションの建物部分は、共用部分と専有部分に分類できます。共用部分とは、読んで字のごとく、“共”に利“用”するスペースのことです。具体的には、エントランスや廊下だけでなく、避難経路になるバルコニーや玄関扉・窓なども含まれます。
それに対して、自分自身の住まいとして独立して自由に利用できるスペースを専有部分と言います。購入した部屋の室内のことを言います。

火災保険をかける場所

保険をかける対象ですが、対象になる場所の管理責任者が誰なのか?により決まります。
先程お伝えした共用部分はみんなのスペースなので、マンションの所有者全員で共有することになります。つまり、管理責任は、所有者が管理するために作っている組織である「マンション管理組合」で負うことになります。
それに対して、専有部分は所有者個人のスペースですから、管理責任は、当然、所有者本人になります。
ですから、分譲マンションを購入した場合、共用部分を対象にした保険は管理組合でかけていることがほとんどです。そして、ご自身で加入する火災保険の対象となるのは、専有部分である自分の部屋(専有部分)を対象にしたものになります。

マンションに必要な補償・不要な補償

火災や水災などだけでなく、地震のリスクも考慮しましょう

火災保険には、火災、水災、盗難、水濡れ、破損など一定の補償がセットになっているパッケージ型の保険があります。お手軽に補償を備えたいということであれば、このタイプの保険を選んでください。
ただ、余分な補償が含まれ、無駄なイメージを持たれる方も居るでしょう。それは嫌!という方のために、契約する際にご自分でどの補償をつけるか選べるカスタマイズ型の保険もあります。
カスタマイズ型の補償を選ぶ場合、購入されたマンションや部屋でどのような生活をするのか?どのような災害に遭いそうか?をイメージし、補償内容を吟味することが大切です。

補償内容の具体的な考え方

たとえば、高層階にお住まいの方であれば、水災の補償は不要と考える方が多いようです。確かに、洪水などの水害が発生しても床上浸水などの被害にあう可能性は低いでしょう。一方、水漏れなどで家財の被害にあう可能性は低層階でも高層階でも一緒ですから、補償は必要になります。
意外と盲点になりやすいのが風災の補償です。風で飛んできたもので窓が割れるなど、風災で被害を受ける可能性もあります。今まではあまり考えなくてもよかったのですが、近年の気候変動により、竜巻などの突風が発生したり、突然、雹(ひょう)が降って来たりすることもありえます。
また、日本では基本的にどこに住んでいても地震のリスクはあるため、地震保険も付けたほうが安心できるでしょう。2016年に発生した熊本地震は、それまで大地震は起きないと言われていたエリアで発生しています。

気になる保険料はどうやって決まる?

まずは見積もりを取ってみるのもおすすめです

保険加入を検討する際、補償内容ももちろんですが、保険料がいくらになるか?も気になるポイントです。
火災保険の場合、建物の保険金額は「同等のものを再築もしくは再取得するといくらかかるか?」という発想で考える「再調達価額」を基準に算出します。ですから、この「再調達価額」がわかると計算はしやすくなります。
また、火事や災害に対して強いか弱いか?など建物の構造によっても保険料が変わります。一般的にマンションのほうが一軒家より火事や災害に強いので、保険料が安くなるのが、マンションの火災保険の特長です。

まとめ

火災保険は一軒家にかける保険というイメージが強いと思います。
分譲マンションの場合、管理組合が火災保険に入っているから大丈夫!と大きな勘違いをされている方も意外と多いのも事実です。しかし、お伝えしたように、マンションはご近所との間が壁一枚で仕切られ、両隣・上下が密着しているので、万が一、災害が発生した際に、被害を受けてしまったり、逆に被害を与えてしまったりする可能性が高くなります。
自分の部屋=専有部分は、管理組合の入る火災保険の対象外ですから、自分自身で火災保険に加入する必要があります。
その際、火災保険の保険料がとても気になると思いますが、たとえば、火災の発生確率の低いオール電化マンションの場合、割引があるケースもあります。ご自身のマンションで適用できる割引があるか確認するとよいでしょう。

執筆年月:2017年8月
ファイナンシャルプランナー 佐藤 益弘

佐藤 益弘(さとう よしひろ)

CFP®、マイアドバイザー®登録ファイナンシャルプランナー。株式会社優益FPオフィス。 2000年の開業以来、常にお客さまに寄り添うサポーターであり続けるため、商品販売を伴わないファイナンシャルプランナーとして活動中。最近は住宅購入や住宅ローンの見直し、実家の空き家問題など不動産関連のご相談が多い。

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