がん保険は必要?不要?必要と言われる理由とは?
保険とお金のプロが教えます

がん保険は本当に必要なのでしょうか?特に、掛け捨てタイプのがん保険には解約返れい金がないことが多いため、加入にあたっては、コストパフォーマンス(費用対効果)を慎重に検討する必要があります。ここでは、年齢別のがんにかかる確率、がん治療に必要な費用、がん保険の保障内容などから、がん保険が実際に役に立つのかどうかを解説します。

 がん保険は必要?不要?必要と言われる理由とは?保険とお金のプロが教えます

【年齢別・部位別】がんにかかる確率

生涯で何らかのがんにかかる確率は、男性:63%、女性:47%となっています(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター「最新がん統計」)。男性も女性も「2人に1人はがんにかかる」と言えるでしょう。この確率だけ見ると、がん保険への加入は生涯不要、とは安易には断言できません。

がんにかかる年齢別リスク

たとえば、現在20歳の人が40歳までにがんと診断される確率は、男性ではわずか125人に1人、女性でも50人に1人です。

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現在年齢別がん罹患リスク(男性)
現在の年齢 20歳 30歳 40歳 50歳 60歳
10年後 0.3% 0.6% 2% 6% 16%
20年後 0.8% 2% 7% 20% 39%
30年後 2% 8% 21% 41%  
40年後 8% 21% 42%    
50年後 21% 42%      
60年後 42%        
生涯 63% 63% 63% 64% 63%

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現在年齢別がん罹患リスク(女性)
現在の年齢 20歳 30歳 40歳 50歳 60歳
10年後 0.4% 1% 4% 6% 9%
20年後 2% 5% 9% 14% 21%
30年後 5% 10% 17% 25%  
40年後 11% 18% 28%    
50年後 18% 29%      
60年後 29%        
生涯 47% 47% 46% 44% 41%

[出典]国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター「最新がん統計」

しかし、さらに年齢が高くなると、がん罹患リスクは高まります。50歳までには男性は50人に1人、女性は20人に1人、60歳までになると男性はおよそ13人に1人、女性はおよそ10人に1人と1割近くががんにかかるのです。

がん保険の保険料は年齢によって変わります。 あなたの保険料をチェックしてみましょう。

がんと診断されてからの生存率

がんは部位によって、命にすぐにかかわるものとそうでないものがあります。
2006年から2008年にがんと診断された人の「5年相対生存率(5年後に生存している人の割合)」を見てみると、全部位では62.1%(男性:59.1%、女性:66.0%)です。前立腺がん、皮膚がん、甲状腺がん、乳がんなどの生存率はほぼ9割以上ある一方で、膵臓(すいぞう)がん、胆嚢(たんのう)・胆管がんなどの生存率は3割以下になっています。

5年相対生存率
おもな部位 男女計 男性 女性
全部位 62.1% 59.1% 66.0%
前立腺 97.5% 97.5%
甲状腺 93.7% 89.5% 94.9%
皮膚 92.4% 92.2% 92.5%
乳房 91.1% 91.1%
肝臓 32.6% 33.5% 30.5%
31.9% 27.0% 43.2%
胆のう・胆管 22.5% 23.9% 21.1%
膵臓 7.7% 7.9% 7.5%

[出典]国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター「最新がん統計」

がん治療にかかる費用

かかる確率の高いがんの平均在院日数と入院費用は以下のとおりです。

がんの種類 平均在院日数 入院費用(3割負担の場合)
胃がん 19.3日 約 28.9万円
結腸がん・直腸がん 18.0日 約 25.2万円
気管支・肺がん 20.9日 約 20.8万円
乳がん 12.5日 約 23.1万円

[出典]平均在院日数:「平成26年患者調査の概況」(厚生労働省)(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/14/dl/03.pdf)を 加工して作成、入院費用:「医療費(重症度別)H28 1-3月 」(公益社団法人全日本病院協会)(https://www.ajha.or.jp/hms/qualityhealthcare/pdf/2015/01-03/h27d_outcome_09a.pdf)を加工して作成

入院費用以外にも衣類や洗面用具などの日用品代のほか、1人から4人室を希望する場合には差額ベッド代がかかる場合があります。2015年7月1日時点での推計で、1日当たりの差額ベッド代の平均額は6,155円であり、1人室を選択した場合には7,828円(出典:厚生労働省 中央社会保険医療協議会資料「主な選定療養に係る報告状況(2016年10月19日)」)です。仮にがんで20日入院して差額ベッドを利用しても12万から16万円ですので、入院費用、入院費用以外を合わせても、「多くても50万円まで」と考えておけばよいでしょう。

「高額療養費制度」で自己負担額を減らせる

医療費が高額になってしまう場合、高額療養費制度を利用することで、一定額を超えた分が戻ってきます。

 「高額療養費制度」で自己負担額を減らせる

たとえば、かかった医療費が100万円で、自己負担部分(3割部分)が30万円の場合、212,570円が高額療養費として支給され、自己負担額は87,430円(70歳未満の給与所得者で標準報酬月額28万円以上50万円以下の場合)ですみます。この制度は、同じ医療機関で1ヵ月にかかった自己負担額が、所定の自己負担限度額(その人の所得や年齢によって異なります)を超えたときに適用されます。差額ベッド代や、入院中の食事代の自己負担分など、公的医療保険から給付がないものは対象外です。

適用を受けるには、加入している健康保険組合などに申請して限度額適用認定証を取り寄せ、病院の窓口で保険証とともに提示する必要があります。
この限度額適用認定証は高額療養費制度を利用するうえで必要となり、もし提示しない場合は、3割などの自己負担分をいったん支払い、あとで高額療養費を請求して差額分を払い戻してもらうことになります。払い戻しには時間がかかるため、やはりあらかじめ限度額適用認定証を取り寄せておくのがよいでしょう。
なお、自己負担額は、医療機関別、入院・外来別、医科・歯科別にわけて計算します。また、世帯で合算することもできます。詳しくは加入されている健康保険組合などにご確認ください。

働けなくとも「傷病手当金」が給料の代わりになる

会社員や公務員であれば、入院などで仕事を休んだときに給料が支払われなくても、健康保険から給料の約3分の2である「傷病手当金」が最長1年6か月間もらえます。給料が支払われる場合でも、傷病手当金の額より少ない場合はその差額がもらえるのです。ある程度の貯えがあれば、がん保険を選ぶ際に、給料補てんを考慮することはほとんど不要と言えるでしょう。

末期がんなら「介護保険」で自己負担が1割に

40歳以上の人が末期がんになり介護が必要になってしまった場合は、公的介護保険の介護サービスを自己負担1割で利用できます。がんと介護保険は結びつきにくいかもしれませんが、これも覚えておくとよいでしょう。

がん保険からもらえるお金

次に、がん保険の一般的な給付内容について解説します。

 がん保険からもらえるお金

1.診断給付金

がんと診断されたときにもらえる一時金です。不安なときに、まとまったお金がもらえるのは大きなメリットですね。診断給付金は一回のみもらえるタイプと、複数回もらえるタイプがあります。ただし、複数回もらえる商品でも、支払要件(回数や治療後何年後からもらえるかなど)についてはよく確認しておく必要があります。診断給付金は100万円〜300万円の間で設定されることが多いようです。治療給付金と呼ばれる場合もあります。

2.入院給付金

 2.入院給付金

がん保険の入院給付金は、基本的には医療保険のそれと同じしくみです。がんで入院したときに、入院日数に応じてもらうことができます。ただし、医療保険と異なり、がん保険の入院給付金には通常、1入院あたりの支払日数および通算支払日数の制限がありません。そのため、長期入院の場合でも入院日数分の給付金がもらえます。これは大きなメリットと言えるでしょう。入院給付金は、たいていの場合日額5,000円〜15,000円の間で設定されます。

また、がん保険の中には実損填補型の商品もあります。この場合、入院日数に関わらず実際にがん治療にかかった費用が支払われます。

3.手術給付金

がん保険の手術給付金も、基本的には医療保険のそれと同じしくみです。がんの治療のために所定の手術を受けたときに、手術給付金がもらえます。手術給付金は通常、手術の種類によって入院給付金日額の10倍、20倍、40倍などと設定されている商品が多いようです。
実損填補型のがん保険の場合は、がん治療のために受けた手術費用の実額が支払われます。

 3.手術給付金

4.通院給付金

近年、がんによる入院日数は短くなる傾向にあり、通院治療の重要性が増してきました。そのため、通院給付金がついたがん保険が増えています。退院後にがん治療目的で通院した場合、通院日数に応じて給付金がもらえるタイプが多いですが、最近ではがん治療による入院がなく、通院のみの治療でも給付金がもらえるタイプも見られるようになりました。
実損填補型のがん保険では、入院がなく通院のみであっても通院日数に制限なく、治療にかかった費用の実額が補償されます。

 4.通院給付金

5.先進医療特約

がんの治療にあたり、公的医療保険制度が適用されない先進医療を受ける場合もあるかもしれません。先進医療とは厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養などのことですが、この先進医療の高額な治療費(技術料)に備えるために、先進医療特約があります。先進医療にかかる技術料のうち自己負担額と同額(通算2,000万円までが多い)の給付金がもらえるものです。先進医療特約部分の保険料は、通常かなり安いと言えます。また、特約ではなく主契約に先進医療の保障が含まれている商品もあります。

6.女性特約

医療保険同様、がん保険にも女性特約を付けることができる場合があります。女性特約はおもに、女性特有のがんに対して保障をより厚くするもので、がん治療目的で所定の手術を受けた場合などに一時金や給付金がもらえます。女性特約は商品によって保障内容がかなり違うため、つける場合はよく確認したほうがよいでしょう。

一般的ながん保険のおもな保障内容まとめ

診断給付金 がんと診断されたときにもらえる一時金。100万円〜300万円が多い。
入院給付金 がんで入院したときにもらえる給付金。1日あたり5,000円〜15,000円が多い。
手術給付金 がんで手術をしたときにもらえる給付金。手術の種類に応じて、入院給付金日額の10倍、20倍、40倍などが多い。
通院給付金 退院後にがん治療のために通院したときにもらえる給付金。1日あたり5,000円〜15,000円が多い。
先進医療特約 がん治療で先進医療を受けたときに、技術料相当額に対してもらえる一時金。通算2,000万円までが多い。
女性特約 女性特有のがんの治療目的で所定の手術を受けたときなどにもらえる一時金や給付金。

実損填補型の補償内容まとめ

実損填補型の保険 実際にがん治療にかかった費用がかかった分だけ補償される。

がん保険の保険料は年齢によって変わります。 あなたの保険料をチェックしてみましょう。

最近のがん保険の傾向と注意点

最近は、従来の診断給付金重視型以外にも、抗がん剤・ホルモン剤・放射線などの各種治療を受けると給付金がもらえる商品や、がんのステージにより給付金額が変わる商品など、新しいタイプのがん保険も増えてきました。
なお、ある程度進行したがんと上皮内新生物(基底膜にとどまっており、その時点での転移の可能性がないがん)では、給付内容が異なる商品が多いことには注意が必要です。また、がん保険は通常、契約日から90日(3か月)までの間は、がんと診断されても給付金がおりないことも覚えておきましょう。

がん保険はいらない?がん保険が役に立つ確率

一生におけるがん罹患率が高い現代では、がん保険が役に立つ確率は高いといえます。しかし、必ずしもすべての人にがん保険が必要なわけではなく、中にはがん保険が不要な人もいます。がん保険の加入にあたっては、以下に挙げる事項などを総合的に検討するとよいでしょう。

がん保険加入にあたってのおもな検討事項

  • 気になるあるいは心配な部位のがん罹患率
  • 治療にかかる費用とコストパフォーマンス
  • がんに罹患した場合の予想される経済的損失
  • 自身の貯蓄や家計収支の状況
  • 自分なら働き続けられるか(メンタル面を含む)
  • 不確定要素(入院長期化と治療費の高額化、再発リスクなど)
  • 加入によるメンタル面のメリット(終身保障確保や実額補償の安心感など)

最後は価値観。「気になる・何となく不安」な人は加入すべき

がん保険に加入するかどうかは、最後はその人の価値観によります。がん保険も、結局は「保険」、すなわち「不確定要素への備えを、どう評価するか」です。心配性な人や、そもそも「がん保険が気になる。どうしようかな」と思っている人は、加入したほうがよいでしょう。加入する場合は、保障内容を慎重に検討しましょう。たとえば、診断給付金の支払回数については、心配な特定の部位があるのであれば複数回出るタイプがよいといえますが、保険料も上がるのでコストパフォーマンスの検討が必要です。
逆に、「長生きする自信があるし、保険料がもったいない。がんにかかったらそのときはそのとき」、「親族を見渡しても、がんにかかった人がいないのでいらないのでは?」、「貯蓄がある程度あるし、大丈夫では?」と考える人であれば、がん保険は不要といえます。
がん保険は加入すると長い付き合いになりますので、加入に迷う人は、上記の要素を整理して書き出してみて、点数付けしてみるとよいでしょう。

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執筆年月日:2016年12月
(最終更新日:2022年9月20日)
執筆:一色 徹太(いっしき てつた)

執筆:一色 徹太(いっしき てつた)

日本生命でのファンドマネージャーや法人営業の経験をいかし、22年間の勤務後、独立系FPに転身。現在、一色FPオフィス代表として、個人相談や執筆、講演に従事。東証(東京証券取引所)で個人投資家向けデリバティブ講座も持つ。生命保険をはじめ、DC(確定拠出年金)、債券、ETF、デリバティブ、企業年金に特に精通。

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2022年9月 22-0244-12-006